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悪役令嬢をもう一度  作者: 流らいき
10/24

010.令嬢、勉学に力を入れる

 王都に移って、2ヶ月が過ぎていた。

 私とリスティスは、お父様の言いつけ通り、様々は教育を受けていた。

 学問の授業、すなわち政治、経済、算術、地理、歴史は、リスティスと一緒に受けている。

 相も変わらず、リスティスは教師のことはそっちのけで私ばかり見ている。

 始めこそリスティスに気を取られて集中できなかったものだが、10日を過ぎた頃にはすっかり慣れて気にならなくなっていた。

 慣れって恐ろしい。

 でも、慣れてしまった私にリスティスは不満そうだ。

 何度か注意したのだけれど、一向に聞き入れる気配はない。

「授業の時は、わたくしを見ていないで、教師の話をお聞きになって?」

 と言った私に、

「どうして? 俺はつまらない話を聞くよりヴィヴィを見ていたい」

 と平然とのたまった。

 それでいて、教師が出した問題にはすんなり答えることができるのだ。

 もしかしたら、リスティスは王都に来る前に基礎学問以上のことを学んでいたのかもしれない。

 私はというと、ヴィーの記憶があるのだけれど、忘れていることがあることに気がつかされている。

 ヴィーが不真面目だったわけではない。むしろ、熱心な努力家だった。

 それでも細かい幾つかのことは記憶から薄れているようで、教師の話に新鮮さを覚えることもある。

 それに、真希の記憶のおかげで、新しい視点から物事を見ることができるようになっていた。ヴィーの時には気に留めていなかった事柄も、真希の知識から発展させて考えることもできている。

 私はヴィーの時とは違った意味で熱心に授業を受けるようになっていた。

 学問以外の魔法の授業は、リスティスとは別々に受けている。

 私の教師は、領地から着いて来たフェイが担当してくれている。

 領地から移動する際に知ったのだけれど、フェイは魔法の家庭教師と兼任して私の護衛として雇われていたらしい。どちらかと言うと護衛のほうが本職だったみたいだ。

 フェイから魔法を習い始めて1年が経過しており、今は護衛のための魔法を中心に習っている。

 これは私の意向を汲んでのことだ。

 もともとヴィーには魔法の才能があり、優秀な使い手だった。

 それでも、度重なる襲撃によって2回も護衛を亡くしている。

 今回はそんなことにはしたくない。

 だから、私自身が最低限自分の身を守れるようにしておきたかった。

 幸いヴィーの知識があり、小さな頃から磨いた魔力操作のおかげで、今の私はヴィーの時より魔法の使い方を応用できるようになっている。

 呪いという懸念が残っているのだ。

 慢心などできるはずもなく、練習を積んでいる。

 一方リスティスは、学問の授業と違ってしっかりと取り組んでいるらしい。魔法の授業でも非凡な才能を見せつけているようだ。

 確かにかつてのリスティスも魔法の才能があった。その実力は、ヴィーよりあったほどだ。だからこそ庶子でありながら侯爵家の跡取りとして引き取られたのだろう。

 他に、剣術の授業とマナーの授業があり、これも分かれて受けている。

 どちらも性別の違いで習う内容が違うのだろうと予想している。

 一度、リスティスの剣術の授業を見かけたのだけれど、私のものと比べて随分とハードな内容だった。分けてくれて良かった。

 私は他にも針仕事、屋敷の管理方法、慈善事業や茶会の催し方などの教育を受けている。これも女性のための教育になるので一緒に受けることはない。

 その間リスティスはリスティスで別の授業を受けているみたいだ。

 ダンスの授業は一緒に受けている。同じ体格の男女なのでパートナーとしてうってつけだからだろう。

 今日は、ウィンナーワルツの練習だった。

 ヴァイオリン奏者の奏でる曲に合わせて3拍子のステップを踏む。

 ダンスの授業の時は、普段着用のドレスではなく、裾が床に届くドレスを着ている。正装には及ばないものの、回転した際に裾が広がる様が美しく見えるように計算されたドレスだ。

 リスティスもこの時ばかりはジャケットを着用している。

 始めはこの長い裾に足を取られて、上手くステップが踏めなかったり、リスティスの足を踏んだり、リスティスを巻き込んで転ぶことすらあった。

 ヴィーの記憶でステップを覚えおり上手く踊れていた分、思ったように今の体が動かず、中々もどかしかったものだ。

 リスティスはそんな散々な私にも怒らず付き合ってくれた。

 おかげでこうしてそつないステップを踏めている。

 かつてのリスティスだったら、付き合ってくれただろうか。少し疑問だ。

 リスティスは本当に何でも完璧にこなすことができた。ダンスもすぐに覚えて、華麗なステップを踏んでリードしてくれる。

 一度感覚を掴んだ私も、別のダンスもそつなく踊ることができるようになっていた。

 ダンスの教師は、私たちの上達ぶりを大いに喜んだ。全てのステップを教えると、次から次へと楽曲を替え、曲ごとの特徴を教え始める熱心ぶりだ。

 私たちはくるくると回りながら笑い合っていた。

 私たちにとってこれはもう一種の遊びになっていた。

 走り回って遊ぶということをしない分、結構いい運動になっていたりする。

 何より、人目を気にせず2人ではしゃげる唯一の機会なのだ。楽しまない手はない。

 ヴァイオリンの演奏に合わせてステップを踏み、ターンする。

 2人の体は離れたり、くっついたりしながら遊戯室(プレイルーム)のあちらへこちらへと移動していく。

 ヴィーの時も、こんな風に踊っていたように思う。あの頃は、もう10歳位だったし2人ともすでに踊れるようになっていたから、そんなに頻繁に機会はなかったけれど。

 それでもかつてのリスティスとの思い出を体現しているようで、不思議な気分だった。


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