001.OL、前世を思い出す
久しぶりにまともに小説を書いています。普段は3人称なので、1人称らしくない表記もあるかもしれません。つたない部分も多々あると思いますが、よろしくお願いいたします。
はじめは気のせいだと思った。
なんか聞いたことがある名前だな。と。
他のゲームやマンガとかで似たような名前があったんだろうな。くらいで大して気にしていなかった。
この子も、この子も聞いたことあるような気がするけど、まあいっかって。
そうして、目当ての攻略対象の王子様とのエンディングを迎え、スチルとともに流れる後日談を目にした時、思わずゲーム機を取り落とした。
え?
いやいやいや、そんなまさか。
ゲーム機を拾い上げ、とりあえずセーブしてニューゲームを選択。
今度は誰にしようかな。
・・・・・・。
おかしいな。目が疲れているのかな。
目をこすってもう一度見直しても、画面の中身は変わらない。
まあまあ。とりあえずね。
改めてゲームを再開し、次の攻略対象とのエンディングを目指して進めていく。
そうそう、彼ならこう言いそうだよね~。
そうして、あっという間に3人の攻略対象をクリアしていた。
金曜の夜に始めて、ぶっ続けプレイでもう土曜の夜・・・いや、日曜の朝だ。
カーテンの隙間から朝日が漏れてる。
まさかの2徹だよ!!
あー、そうだ疲れてるんだ。
寝よう。
深い眠りから目覚めた夕方。
ゲームの回収済みスチルとムービーを確認し、間違いないことを確信する。
ヒロインに相対する、ゴージャスな金の巻髪の美女のスチル。
所謂悪役令嬢という役どころの彼女の名前は、ヴィヴィアン・ハーグリーブス。
それは、私の、前世の名前だった。
それから数日かけて、攻略サイトを調べたりしてこのゲームをやり尽くし、情報収集を徹底的に行なった。
他の攻略対象はもちろん隠しキャラも攻略し、女性キャラとの友情エンディングもクリアする。
それと同時に私ことヴィヴィアン・ハーグリーブスのことも思い出せる限り、詳細にメモを残して整理する。
攻略対象の王子、伯爵令息、その異母弟、侯爵令息、ヒロイン、他のライバル令嬢。どれもヴィヴィアンが知っている名前と同じだった。隠しキャラの王子の側近でさえ知っている。
国の名前も、都市の名前も。都市の位置も概ね一緒だ。
とはいえ、前世の記憶とゲームには乖離があるということもわかった。
当たり前といえば当たり前だけど、ゲームなので同時期にイベントが発生し誰の誘いに乗るか選択できたりするが、現実にはヒロインが複数の男性と交際していたわけではない。
でもこれだけ一致するなんて、どう考えてもおかしい。
そもそも、攻略対象である少年たちとヒロインの女の子の交流の真偽も定かではない。少なくとも王子以外は知らないし、王子だってそれほど親しいとは思っていなかった。
あんな優しい言葉をかけることができる人だとは思っても見なかった。私には、あんなに冷たかったっていうのに、だ。
あ、なんかだんだん腹立ってきた。
一旦、落ち着こう。
このゲームは、いわゆる乙女ゲームってやつで、シリーズの2作目。前作も同じ王立学校を舞台にしていたらしい。
前作はやったことがなかったんだけど、友だちから聞いてたし、情報サイトとかでは調べられたのでそこそこの内容はわかった。
そのキャラクターでさえ、何人かは会ったことは前世の記憶にある。
1作目と2作目のシナリオライターやプロデューサーとかに同じ人が何人いるみたい。
このうちの誰かが私と同じように前世の記憶を持っている人がいるに違いない。
ならば、絶対この人を見つけよう。
その人なら、私が知りたい情報を持っているかもしれない。