表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユートピア  作者: バル
9/44

08

 その小さくなっていくアリスの後ろ姿を眺めながら、僕は小さい頃を思い出していた。

 それは僕がまだ頭にナノチップを入れていなかった頃。たっぷりの愛情とたっぷりのやさしさに育まれ、それでも年相応に反抗期に差し掛かっていた頃。

 僕は愛情が疎ましかった。

 僕はやさしさが煩わしかった。

 だって大人は怒りと言う感情を失くしてしまっているかのよう。みんなが優しく、親切で、丁寧で、愛情を分け合っている。

 これが暴力の限りを尽くし、略奪の手を緩めなかった世代の人たち。そのディストピアの反動でいまや誰もが穏やか。はたから見れば、とても同一人物とは思えないほどに穏やか。

 まるでもとから暴動なんて、略奪なんて、何も起こらなかったかのよう。ディストピアなんて、不正に改竄された歴史であって、僕たちはもともとこのユートピアで生活を営んできたかのよう。

 誰ももう二度とあんなことが起こってほしくないんだ。そのためにはなんだってする。ナノチップを入れなきゃいけないなら喜んで入れるさ。例えこれに依存することになっても。

 僕の父はそう言って聞かせてくれた。そしていまや誰もが、その通りナノチップに依存している。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ