05
Name:{**********}
State:{CIS staff}
Pass:{*******-173}
Passive:{image-datano4675}
Code:{****}
Open:{image-datano4675}
{
Name:{error }
Age:{error}
Sex:{error}
State:{error}
Property:{error}
…
}
一面に表示されたエラー表示。僕のナノチップは律儀に、変わることのない『エラー』の文字を上から下へとスクロールしていく。
『すべてがエラー表示だ。こいつの情報が来てから保護システムの調子がおかしい』
これは僕にも見覚えがあった。
「違法ナノチップだな」
『違法ナノチップだと。そんなものがあるのか』
「あぁ、数年前に一度ロンドンでもあった。自分のナノチップとは別にもう一つ非正規のナノチップを違法に埋め込むんだ。存在しないはずの人間を存在させることができる手だよ。当然保護システムもオールエラーは混乱する」
『そんなことが』
「保護システム自体はその情報を消してしまえば直ると思う。でも一応ダンプティ、おっと、これから来るエキスパート君に見てもらってくれ」
『わかった、お前には感謝するよ。我々はこの違法チップ野郎を取っ捕まえてやる。友人がCISにいてくれて助かるよ』
ザムザが回線を閉じてしまう前に、あぁそれから、と僕は付け加える。
「君が虫になってしまわないことを祈るよ」
『いつもの忠告か。分かっているよ。それじゃあな』
ザムザは笑いながらそう言って回線を閉じる。こんな時、警察の役割も果たすLISやCISは便利だと思う。警察の役割が組み込まれているのも、セキュリティを高めるのに一役買っているのだろう。僕が犯人だとしても、わざわざ警察を襲おうとは思わない。
僕としてはザムザとダンプティ、友人二人同時に手を貸すことができて万々歳。ダンプティに関しては貸しを作ることもできて一石二鳥。
ナノチップのおかげで、僕たちはその場にいながら遠くの現場を見るというような芸当もできるようになった。もちろん見ることができるだけで、実際に触ったりすることはできないのだけれど。
昔はな、どこか遠くに出張に行かなければならなくなったら、その場にいながら先方の様子を知るには、電話をかけて、相手の証言に従うほかなかったんだ。
僕の父はそう聞かせてくれた。
こっちが頼れるのは先方の話だけだから、先方の話とこっちの認識に齟齬が発生することも多くあった。今みたいに画像を送ることなんてカメラ通話でしかできなかったし、そもそも画質もあまり良くなくて、とてもそれで判断して直すことができるような代物ではなかった、と。
僕の父はいつだって、この世界がいかにユートピアであるかを説いてくれた。まだまだ多くの国でこんな生活ができていないところもあるんだ、と。