04
Name:{**********}
State:{CIS staff}
Pass:{*******-173}
Access:{online}
Online search:{Glasgow}
{概略:スコットランド最大の都市。人口は四八六百人(二一四九年)である。二一〇四年にイギリス四番目となる地方情報管理局(LIS, Local Information Supervision bureau)の建てられた地であり、イギリス国内で最も貧富の差が少ない都市でもある}
頭のナノチップがオンラインにアクセスし、検索をかけてくれる。その情報はあたかも自分が考えたことのように頭に浮かんでくる。
「グラスゴーのLISで何かあったのか」
「さぁな、大方また保護システムの不備とかでCISの人間が必要になったんだろうさ。それじゃ、ちょっくらグラスゴーに行ってくる」
もちろん地方によってはLISにだって保護システムをいじって直すことのできる人も、はたまた改良して独自のセキュリティシステムを構築することのできる人だっているけれど、そういう人はだいたいCISの方にヘッドハンティングされてくる。
LISにはその地方の人たちの個人情報しか保管されていないから。
CISの保護システムの方がより情報量も、保護システムにかかる負担も大きいから。
でもそれは規模の問題であって、保管するのがその地方の人たちの個人情報だけなのか、それとも国中の人たちの個人情報なのか。たったそれだけ。
ウエイトがCISの方に若干傾いている。たったそれだけ。
だからこうやってLISに問題が発生し、LISの人たちだけではどうにもならない時は、CISから人を派遣させるようになっている。
ダンプティを見送りながら、僕はナノチップで回線を開く。神出鬼没なアリスはすでにどこかに行ってしまったようだ。
Name:{**********}
State:{CIS staff}
Pass:{*******-173}
Access:{telephone}
Phone number:{**********}
ナノチップに登録された番号で、その人のナノチップに直接回線をつなげる。
『お前か、すまんが今は……少し保護システムに不具合が起きていてな。市民からのクレーム処理や保護システムの処理やなんかでてんてこ舞いだ。これからそっちからエキスパートが送られてくるはずだが』
エキスパート、と言う言葉に僕は思わず笑ってしまう。普段のダンプティには似つかわしくない言葉だ。たしかにCISの保護システム管理部の職に就いているだけでもそこそこのエキスパートなのだろうけれど。
「ザムザ、保護システムがどんな状態なのか見せてもらえるか」
『あぁ、いいとも。今画像を送る』
Name:{**********}
State:{CIS staff}
Pass:{*******-173}
Passive:{image-LIS-P-SYS}
Code:{****}
Open:{image-LIS-P-SYS}
即座にナノチップが、ザムザから送られてきた画像を表示してくれる。グラスゴーの住人の個人情報を健気に守ってくれている、透き通るほどに透明な、少し青味のかかった筒状の保護システムの本体。ナノチップのおかげで僕はあたかもその場にいるように、保護システムの周囲を見渡すことができる。
「本体に異常はないようだ」
たいてい保護システムの本体に異常がある場合には、本体中央にある端末からでる波形の模様が歪んでいたりするけれど、この本体には少しの歪みも見られなかった。となると後は保護システムに記録された情報郡になにか異常が起きているかだ。
『あぁ、しかしどういうわけかある時期から途端に市民の情報が登録、記録できなくなったんだ。こっちには保護システムをいじれる人間はいないし、困ったものさ』
ザムザは有能な人材をみんな持っていくCISに不満の色を持たせて言う。
「確かにグラスゴーからはここ数日データに変更が見られなかったな。最後に登録された情報は」
『待ってくれ……これだ』