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「どうして二つも……」
「最初に入れてたのじゃ情報の追加はできても書き換えはできなかったから。私はCISの肩書を入れる必要があった」
「保護システム保管部に入るために……」
「それだけじゃないよ」
「え……」
「最初に入れたナノチップでは、私の状態が“死亡”だったから。それを知った時少し笑っちゃった。たしかに私はこの世界では死んでるも同然だもんな、って」
つらそうに笑うジェーンの顔を見るのが辛くて、僕は少しうつむいてしまう。
「でも新しいナノチップの方がもっと大変だった。認証するたびに別な誰かにならなくちゃいけなかったから」
ジョン、あなたは耐えられる……
僕をうつろな瞳で見つめたまま、ジェーンは僕に問いかける。
「自分はここにいるはずなのに、認証するのは自分じゃない誰かであることに」
僕はどうなのだろうか。自分じゃない誰かの名前で認証することに耐えられるのだろうか。認証するのが僕ではない誰かなら、認証している僕とはいったい何者なのだろうか。
僕はきっと、耐えられない。
「そう。私も耐えられなかった。もともと不安定だった私と言う存在が、認証するたびに消えていくようだった。すこしずつ、すこしずつ」
僕は心が締め付けられるようだった。
「だから、ジェーンはこの世界に復讐を」
「本当はね、ジョン。私は今持ってる個人情報をみんなにばら撒くつもりはないの。みんなが今のユートピアに疑問を持って、自分は自分だ、って思ってくれればそれでよかった。CISからみんなの個人情報を抜き取った時点で、私の復讐はほとんど終わっていたの」
それで、とジェーンは言葉を区切る。




