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これは僕のわがままだ。これは僕の欺瞞だ。僕はきっと怖れている。ジェーンを制圧することを。ジェーンが殺されるであろうことを。僕が殺さなかったとしても、誰か、ほかの人の手によってきっと殺される。個人情報を盗んだテロリストとして。人々を扇動して暴動を起こさせた張本人として。
だから僕は、誰よりも先にジェーンを見つけなければならない。アルトゥールやアリスやダンプティよりも先に。僕はまだ、彼女に謝ることができていないのだから。
僕は思う。もしあの時、ジェーンが回線を切る前に謝ることができていたのなら。
僕の心は、ジェーンに届いていたのだろうか。
ジェーンの心を、少しは癒せていたのだろうか。
昼も夜も見境なく矢継ぎ早に発生する暴動で、CISは二十四時間厳戒態勢を強いられるようになり、職員たちには疲労の色が濃く表れていた。
暴動の手段は実にさまざまだった。
原始的な木の棒。
納屋にあった鍬。
大昔に使われた狩猟用ライフル。
お手製の火炎瓶。
さまざまな人たちが、さまざまな方法で怒りをぶつける。
ついにCIS局長、ハムレット局長もしびれを切らし、僕たち管理部をどやしつける。もちろん極限までやさしさをこめた言い方で。局長もナノチップによって怒りを封じ込められた世代の一人。




