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ユートピア  作者: バル
35/44

08

Number:2


 あれからさほど進展も見られず、三日が過ぎていった。CISへの襲撃も日に日にその数を増やしつつある。ザムザに連絡してみると、あっちのLISも同じような状態らしい。襲撃に次ぐ襲撃。暴動に次ぐ暴動。まるで『マッドマックス』だ、と僕は思う。誰もが自分の攻撃性に身をゆだね、CISやLISを襲撃にかかる。

 ついにCISも籠城作戦ではどうにもできなくなり、外に出て応戦しなければならなくなっていた。

 負傷して戻ってくる者たち。完治したらまた外に出て応戦するのだろうか。テロ犯を捜索している僕たち保護システム管理部もそのうち駆り出されるようになるだろう。それだけ物量の差は開いていた。

 中には暴動を起こさずに自殺を図る者だって出てくるようになった。

「私には暴動を起こす勇気もないけれど、かといって別の誰かになってしまう恐怖には耐えられない。だから私はこの恐怖から逃げ出します」

 そんな遺言を残して、あるいは何も残さずに、この暴動の蔓延るユートピアからの脱出を試みる者もあった。

 今やイギリス人は完全に三分割されていた。

 暴動を起こす者たち。

 暴動から守る者たち。

 この世界から逃れる者たち。

 暴動を起こす者たちの撃対象はCISやLISにのみならず、暴動に積極的でない者にまでに及んだ。もちろん暴動を起こすのは僕たちの世代。暴動に積極的ではないのは暴力性を消された僕たちの親の世代。暴動による負傷者も、暴動によって起こされる破壊も、CISやLIS付近以外でも見られるようになっていった。まだ比較的小規模ではあったけれど、それは着実に規模を広げていった。

 この状況においてもジェーンのことを話さない僕は、ジェーンを庇っているのだろうか、と思う。まだジェーンのことはアルトゥールにも、アリスにも、ダンプティにも、誰にも言っていない。本当はすぐにでも伝えるべきなのだろうけれど。

 あるいは、僕もジェーンに感化されてしまっているのかもしれない。ジェーンの憎んだこの世界を、僕も憎むようになってきてしまっているのかもしれない。だから僕はこの暴動が広がりを見せていても、頑なにジェーンのことだけは庇おうとしているのではないか、と。


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