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ユートピア  作者: バル
33/44

06

「そして二つ目は」と、アルトゥールが続ける。

「二つ目は、プロトタイプはわたしたちの意識に干渉することができた。これがプロトタイプの本来の目的だったらしい」

「本来の目的、とは現金を廃止して略奪を防ぐことだったのでは」

 僕は以前アルトゥールに聞いた内容を反復して尋ねる。

「いや、略奪を防いだだけでは暴動は収まらない。むしろ暴動を抑えることを前提に、プロトタイプは開発されていたらしい」

 そこまで聞いて、僕にはその先が分かったような気がした。

「と、言うことはそのプロトタイプは僕たちの攻撃性を、そして暴力性を抑えることができた」

 僕の両親がそうだった。攻撃性を残らずなくされた僕の両親。いつだって穏やかで、いつだって他人を思いやっていた僕の両親。

 そして僕はと言えば、それがとても不気味に思えた。

 かつて子どもがいたずらをすると、きまって親はそれをたしなめた。

 かつて子どもは、両親に叱られながら成長していった。

 かつて親の中には、自分の子どもを虐待する者もいた。

 僕はそのうちどれも経験をしたことがなかった。きっと僕たちの世代は誰もが。

 いまや子どもがいたずらをしても、誰も怒らない。

 いまや子どもは、親に暖かく見守られながら成長していく。

 いまや親が子どもを虐待するなんてありえない。 

 なぜなら僕たちの世代はみんな、やさしさに包まれて育てられたから。暴力性も攻撃性も消された世代に育てられてきたから。絹のように滑らかに、優しく、穏やかに。僕たちに攻撃性を持たせないように、穏やかに。

 だれも、怒りを知らずに育ってきたから。他人に優しくあれ親切であれと教わってきたから。


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