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うだるような暑さの中、ジェーンに連れてこられたのはロンドンの端の方にある小高い山だった。僕たちはその山腹に立っている。それほど高くはない山だけれど、ここからでも十分ロンドン市内を一望することができた。僕たちは木陰に立って、ロンドンの街を見下ろす。ひときわ目の引く建物はCISで、道路をあくせくと走り回る電気自動車たちはまるでミニカーだ。
「ここが私の好きな場所。この景色が私の好きな風景。ジョンはこの山の名前、知ってる……」
言われてみれば、ここに山があることは知っていたけれど、その名前を僕は知らなかった。ただ単にロンドンの山、と僕たちは呼んでいた。
「僕たちは単にロンドンの山、と」
そう言うとジェーンはくすくすと笑う。
「フュノン、って言う名前。私はロンドンの山、って名前も素直で素敵だと思うけど、ここは本当はフュノン、って言うの」
「ウェールズにもそんな名前の山がなかったっけ」
「うん。あれは本当は山じゃなくて丘だけど、ここはちゃんと千フィート以上あるから山。でも、昔はここに山なんてなかったの」
「そうなんだ」
昔、ここに山がなかったとしたら、ここには何があったのだろうか、どんな町が築かれていたのだろうか。




