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「本当はもっと多くの種類があるのですが、残念なことに今日はこれしか持っていなくて」
「いえ、全然かまいませんよ。ところで、今の時代にどうして現金での取引を」
現金と言う死んだ道具での取引を、と僕は尋ねる。
「私は、好きなんです。このお金のやり取りが。ナノチップじゃお釣りももらえませんからね。それに、昔は、現金がまだ生きた道具だった時代は盗難にも気を付けなくてはならないようでしたが、今では誰も現金なんて死んだ道具は盗らないでしょうし」
あぁ、お釣りと言うのは、とジェーンは僕にお釣りの説明もしてくれる。ジェーンの話が熱を帯びてきたところで、突然ジェーンは我に返ったように赤面する。
「ごめんなさい、私、つい熱弁してしまって」
話も面白かったし、僕は全然かまわなかったけれど、ジェーンはきまり悪そうだ。
「構いませんよ。お金を見せていただいたお礼に、コーヒーでもごちそうしますよ。のどが渇いたでしょう」
「そんな、申し訳ないですよ」
「遠慮はいりませんよ。さぁ」
ジェーンは少し悩んだ後、少しだけ、とうなずいてくれた。




