06
Number:3
ジェーンとの二度目の邂逅は、休日の街中だった。夏の季節を先取りしたような涼しい服装で、ジェーンは店の間の細い道を通っていく。悪いとは思いつつも、純粋な好奇心から、僕はジェーンの後に続く。道はどんどん狭く、そして人通りはどんどん少なくなっていき、僕は一抹の不安を覚える。
やがて、ジェーンが曲がった角を追うと、そこには小規模の商店が開かれていた。目に鮮やかな緑色のキャベツにまっ赤なトマト。所狭しと並べられたたっぷりの野菜類。ジェーンはその中のトマトと玉ねぎを手に取った。代わりにジェーンは懐から何やら黒いものを取り出し、その中からさらに二、三枚の紙を取り出して店の人に渡す。黒いものを懐にしまったところでジェーンは僕に気が付いたようだった。
「ジョン、どうしてここに」
僕はどうごまかそうか上手い言い訳を思いつかなかった。僕は結局、正直にあなたについてきました、とも言えずに話題をそらすことで精一杯だった。
「先ほど取り出していた黒いもの、あれは一体なんですか」
「あぁ、これですか。財布、と言うものです」
ジェーンはそらした話題に乗ってくれる。取り出したのは黒い革製の長財布だった。現物を見るのは初めてだけれど、僕も財布を知らないということはない。
「財布……と言うことは先ほど出した紙は」
「えぇ、お察しの通り、紙幣です」
ジェーンは長財布の中から紙幣を取り出してみせる。
「でもお金はとうの昔に廃止に」
ジェーンはまたいたずらっぽく笑う。
「そうです、そうです。ですが、ここのようにひっそりと、細々と、現金の流通している所も残っているんです」
それは知らなかった。僕は現金の廃止と同時にすべての現金は廃棄されたと思っていたけれど、ここのように現金が生き延びている所もあったのだと、僕は興奮を抑えられない。
「少し、見せてもらっても構いませんか」
えぇ、とジェーンは微笑んで、僕に紙幣とコインを渡す。
「この水色のお札が五ポンド札で、このオレンジ色は十ポンド。七角形のこれは二十ペンスです」
僕は始めてみる本物のお札とコインに心を奪われていた。お札ごとに、コインごとに違う模様が美しく、いつまでも眺めていたい気分だった。
僕はじっくりと眺めてやがて満足し、お礼を述べてお金をジェーンへと返した。




