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それから数分経たずにザムザは大量の食料品や生活用品の山を抱えて帰ってきた。
「おう、起きてたか。ほら、朝飯だ」
そう言ってザムザは食料品の中から果物類を取り出して、僕に投げてよこす。
「あれからそっちの保護システムの調子はどうだい」
「あぁ、おかげさまですっかり元通りだ。ようやくCISともリンクできるようになったよ」
CISから来たやつは顔色悪かったが大丈夫か、とザムザはダンプティの心配もしてくれる。
僕はそれに自業自得だと肩をすくめて答える。高所恐怖症なのに電磁飛行機で行くからさ。
「そういや以前の違法ナノチップ野郎が言うには違法ナノチップの売人はロンドンにもいるらしい。注射一本で別人になれるとはな。そっちも気を付けろよ」
僕はもらったリンゴをかじりながらザムザの話を聞く。
「問題はそこじゃないんだ、ザムザ」
「どういうことだ」
ザムザは驚いた様子で目を見開く。
「別人になれることが問題じゃないんだ。一番の問題は資産総額までエラーになってるところなんだよ」
「たしかに資産総額もエラーになっていたが、それだとどうなるんだ」
「エラー表示の資産総額は無限に等しい状態なんだ。際限なくお金を使える状態だよ。CISのシステムプログラム科がいま対策をしている所だけれど。エラー表示は無限と同義ではなくてゼロと同義にすることによってね」
ザムザはあっけにとられた様子で聞いている。
「まぁ違法チップを入れる人の目的は大概資産エラーが目的だろうから、そのうち違法チップも意味を持たなくなると思うよ」
僕はリンゴを片手にそう締めくくった。
まだまだ保護システムには改良の余地があるところもたくさんで、アップグレードにつぐアップグレードで、着実にその堅強さを増していっている状態だ。それでも名目は国最高度のセキュリティシステム。日々更新されつつある最高度のセキュリティシステム。
多分セキュリティのベクトルが違うんだろうな、と僕は思う。一つがイカれていても、他の情報には全く影響を与えないようにプログラムされたシステム。肉を切らせても骨を断たれないようにプログラムされたシステム。
それは実際功を奏しているらしく、僕は未だかつて保護システムそのものがダメになったと言う話を聞かない。名目国最高度のセキュリティシステムはその名の通り活動しているようだ。
ゆくゆくはそもそも肉を切らせないシステムへと変わっていくのだろうと思う。




