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Number:2
久しぶりに連休が取れたので、僕は友人のザムザに顔を見せに、グラスゴーまで来ていた。
ザムザの家は森に囲まれていて、ロンドンよりも空気が美味しい気がする。家はログハウスの様式で、いつでも木のいい香りを堪能することができた。その心地よさに、僕はいつもより快適な眠りにつくことができた。枕が変わると寝られない、と言う人もいるけれど、僕に関して言えば快適だったらどこだっていつものように寝られる。快適指数によってはいつも以上と言ってもいいほどに。
そんな僕を夢の世界から引き戻したのは、アリスからのナノチップ回線の呼び出しだった。
そんなに長く寝ていたつもりはなかったけれど、ナノチップは僕に午前九時半を知らせてくれる。たっぷり十時間は眠ってしまっていたようだ。寝起きで働かない頭のまま通話すると、通話にノイズが走ってしまう。僕は回線を保留状態にしておいてから、目を覚ますために洗面所へと向かう。
冷たい水で顔を洗うと、ようやく意識がはっきりしてきたのが分かった。いつまでも保留状態でアリスを待たせるわけにはいかないので、僕はタオルで顔を拭きながら回線をつなげる。
『ジョン、今どこにいるの』
僕は仕事の話かもしれない、と少し気分が少し重くなった。せっかくの連休に仕事の話は勘弁願いたい。
「いま休暇中でグラスゴーの友人のところにいるけれど」
姿の見当たらないザムザを呼んでみるけれど、ザムザの返事は帰ってこなかった。僕と違ってザムザは起こされればすぐに起きる。どうやらザムザは僕より先に起きてどこかに出かけてしまっているようだ。靴も見当たらないから食料品でも買いに行っているのだろう。アリスと通話しながらザムザを呼べるように、声を出す会話と、声に出すことなくナノチップで通話することが同時にできるようになったのは本当に便利だ。完全に同時に二人以上と会話ができる。もちろんナノチップ通話に会話の声は入らないし、ナノチップ通話は会話している相手には聞こえない。




