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ユートピア  作者: バル
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 公的利用なら誰かの個人情報を探すことだって、その人の一日を覗くことだって、僕たちCIS職員にはできるし、許されている。たっぷりの報告書を書くことと引き換えに。僕がCISで一番大変だと思う仕事と引き換えに。

 今回は老婦人を誘導したアリスが手伝ってはくれるけれど、大部分は保護システムにアクセスした僕が書かなければならない。

 検索をかけた理由。

 依頼人の情報。

 検索後の処理について。

 僕はうんざりするほどこまごました報告内容を埋めていく。

 アリスにもらったコーヒーを飲んで眠気を覚まし、僕はまた報告書に向き直る。ナノチップが僕のやることのほとんどをサポートしてくれるようになった今、こうして手書きのものとなるとどうも慣れない。

 僕が思ったことをナノチップがそのまま文章にしてくれる機能もあるけれど、現在でも手書きで文章を作るという風習は絶えず残っている。

 確かにみんなナノチップで文章を作るようになったら、そのうち文字の書き方も忘れてしまうのではないかとも思う。実際今でもいくつか綴りの怪しい単語があるのは事実だし、ナノチップを入れていない学生の頃よりも文字を書くスピードが落ちていることも自覚している。

 僕はたっぷり深夜までかかって、報告書を書き終えた。久しぶりに細かい字を追っていたせいで僕の目は疲労でいっぱいだ。

 さいわい僕の電気自動車は手動(マニュ)操縦(アル)自動(オー)操縦(トマ)が切り替えられる。普段は運転する感覚が好きなので、手動で操縦をしているけれど、今日に限っては自動操縦に甘えることにする。車に目的地を入力しさえすれば、後は寝ていても目的地に連れていってくれる便利な機能。

 僕は目的地を自宅に設定すると、シートに深くもたれて息をつく。シートは僕の体形に合わせて一番楽な体勢になるようにシートを変形させてくれる。

 車の動いている感覚も、僕には伝わらない。いっさいの音も聞こえないし、いっさいの振動もシートがみんな吸収してくれる。

 ご丁寧なことに車内泊も視野に入れられているこの車は寝るにもうってつけだ。技術の進歩のおかげで家のベッドで寝るのと相違ない。あまり寝返りはうてないけれど。


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