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Number:3
僕たちのいるCISには多くの部署があり、また、その分多くの仕事も請け負っている。
「私の息子が2日前から行方不明なんです。回線につないでも応答なしで」
こういった行方不明者の捜索も、人々の個人情報を有している僕たちの仕事だ。アリスは慣れた様子で、その老婦人を誘導する。
「この端末に指をあてて、ご自分の本名を思い浮かべてください。……はい、結構です。少々お待ちください」
老婦人の家族構成のデータを読み取り、ナノチップ経由で老婦人の息子の本名を僕に告げる。
「この人のデータを保管庫から探して、今どこにいるのか見つけてきて」
僕は小さくうなずくと、保管庫に向かって歩き出す。
LISのものより二回りくらい大きな保護システムの本体。僕はそれに指をあてて検索を開始する。
Name:{**********}
State:{CIS staff}
Pass:{*******-173}
Search:{Steven Howard}
Result:{47hits}
名前で検索して四七ヒット。一人一人老婦人の家族構成と一致する人物を探していく手もあるけれど、四七の結果をいちいち調べるのは骨が折れる。
普段僕たちがナノチップに自分の本名を思い浮かべて認証する際に、この同姓同名の判別を瞬時に行ってくれている保護システムは偉大だと思う。
でも今回はシステムが自動でやってはくれないので、僕はさらに彼の母親の名前から絞り込み検索を始める。
Refine search:{his mother}
Her name:{Stephanie Howard}
Result:{1hit}
これだ。最近の動向はロンドン市内の飲食店に立ち入った形跡あり。今日の午前八時にウェールズ行きの電車に乗った形跡もあるから今はまだその電車の中だろう。ここまで分かれば後は刑務部の仕事だ。
僕は今得た情報を刑務部の捜査官、ハッターへとナノチップ経由で送る。アリスにも送るのを忘れずに。
「ご子息は現在ウェールズ行きの電車の中にいます。これからCISの者が確保に向かうところです」
僕から情報を受け取ったアリスがそう告げると、それまで緊張をたたえていた老婦人は安堵の表情を浮かべる。
「生きていたのですね。よかった。ウェールズ行きとなると、きっと息子は恋人にでも会いに行ったのでしょう。前々からウェールズに恋人がいると言っていましたから。確保の必要はありません。私には、生きていさえしてくれれば満足です。本当にお手数をおかけしました。ありがとう。よい一日を」
「よい一日を、マダム」




