閻魔様と遭遇
私前田明の26年間は生きている上で、嫌なことはあった。しかし悲観するものではなかった。喧嘩は多いけど優しい両親。わがままだけど仲の良かった姉。数は少ないけど馬鹿を言い合い何かの時には駆けつけあえる仲間。厳しく辛い思いをしたけどやりがいのある仕事。
優しい人たちに支えられたいい人生だったと大きな音と共に薄れるゆく意識の中でそう思っていた。
「明さんそろそろ起きて」
優しく暖かな声に包まれながら明の意識は浮上した。体を起こし辺りを見回すと白く輝く其処はずっと続いていそうで、すぐ其処までのような不思議な空間だった。
「こんにちは明さん」
声のする方に顔を向けると中性的な雰囲気の美しい人がいた。
「あなたは?」
「私は君の中の言葉でいうと閻魔かな」
「こんなに美しい閻魔様がいらっしゃるんですね」
「私は私の創った世界で生きたものたちの話を聞くのが好きでね。私には形がないのだけれど、この方が親しみが持てるのではと思ってね」
明は今まで色々な場面で神頼みをしてきた日本人にありがちな仏教徒だ。そのため明は顔を下げてしまった。しかし目の前の閻魔様はそんなとってつけた尊敬の念など求めていないと感じ顔を上げ自称閻魔様の顔をしっかり見つめた。
「私は…」
けして長くはない平凡な人生を感謝の気持ちを込めて話しはじめた。
「…両親より先に来てしまったことが心残りですが本当のいい人生でした。」
そう話を閉じたのは話し始めてどれくらい経ったかわからないけれど閻魔様は話にあわせ表情を変えながら聴いてくれた。
「最近はそういってくれる人がいなかったからとても嬉しいよ。だからそんな君に一つ提案がある」
「提案ですか?」
「君の両親が天寿を全うした際、君が感謝していたことを伝えてあげる」
「本当ですか。ありがとうございます」
「その代わり私のお願いも聞いてほしい」
「お願いですか?わかりました。お引き受けします」
「まだ何も言っていないけど良いの?」
明の中で神様はもっと気難しいものだと思っていた。ファンタジーの世界が好きでそのジャンルの本やゲームを嗜んできた明にとっては選択権が与えられているだけで幸運なことなんだと感じた。そしてそんな心優しい閻魔様のお願いだったら引き受けてみたいと思ったのだ。
「はい是非やらせてください」