side幼馴染み
夜中のテンションで書き上げました(言い訳)
「迎えに来たよ」
数ヵ月前に魔王討伐の旅に出たはずの、幼馴染みである魔法使いの青年が、私の家に現れると同時に笑顔でそう言った。
彼の艶やかな黒髪がさらりと揺れ、同じく黒い瞳がこちらを見据える。
巷で美形と噂される彼の笑顔は破壊的ではあるが、それどころではない。
「……はい?」
と間抜けな声を出してしまったのは仕方がないと思う。
だって何が何だかさっぱり分からない。
そもそも数ヵ月前にそんな約束はしていない。
「君のお父さんには既に許可を貰っている。君はもう自由なんだ」
意味が分からない。
「……別に不自由なことなんてなかったけど」
しかし彼は笑顔を消すと、眉間に皺を寄せて表情を歪ませた。
「嘘を吐かなくていい。王女から嫌がらせを受けていたのは知ってるんだ」
「……いや、まあ受けてたけど」
この国の王女様は勇者より目の前にいる魔法使いが好みだったらしく、つい最近まで彼の幼馴染みである私をまるで親の仇のように付け狙っていた。下手すると事故に見せかけて殺されるレベルで。
「でも帰ってきたってことは王女様と結婚するんでしょ?」
ならばもう命の危険はないはずだ。
彼が気にすることはない。
「……は?」
何故か今度は彼が呆気に取られた声を出した。