人がいたら住めません、人がいなかったら住めるでしょう?
「こんにちは」
隣の家の扉をたたく
「はいはい、なんだね~」
と、恰幅のいいおばさん
長袖のワンピースに腰巻きのエプロン
その上からこぼれそうな豊かな胸
見事な西洋のおばさん体型な方ですが
西洋のおばさんたちは、どうしてこうも豊かな胸をおしげもなく晒しているのか
日本人的には不思議ですが、魅力的・・・といえば魅力的ですよね
ちょっとばかり・・・うらやましいですが、そんなことに注視してる場合じゃないですね
「お隣って、今無人ですよね?」
私がそう聞くと、おばさんは、目を輝かせ大きくうなずいた
「そうなのさ~、あれねぇ、去年の秋だったかしら
一角イノシシの角にひっかけられて
その傷が悪化したものだからって、家賃が払えなかったのか
王都にいったのかしらないけど
ともかく夜逃げしちまって、いなくなってねー」
「じゃぁ、荷物もそのままで?」
「そうなのさ、だぁれも片付けないからねぇ~
もともと薬師さんの家だろう?
怪しい薬もいっぱいで、そのせいでたかだかイノシシの傷なはずが
悪化したんじゃないかって噂されてねぇ
借り手すらつかないんだよ
で、危ないから、封じてるんだよ~」
「では、私がそれを片付けたら、しばらく無料でかりませんか?」
「ただですって? まぁまぁ、冗談を」
と言われ、二人で、うふふふ~と笑う
「だって、このままだと、ずぅーっと借り手つきませんよね?」
「そりゃぁねぇ」
「それに、片付けもできませんよね?」
「そうねぇ、おとろしくてさわれないしねぇ(恐ろしくて触れないからね)」
「専門の清掃をいれるとお金、かかりますよね?」
「・・・それをする変わりということかね?」
私は、一拍置き、おばさんの目をじっとみて
自信ありげに笑顔でうなずく
「そうですわ」
「ちょっとまっておくれ」
おばさんは、頭の中で計算をしているのだろう
フレンド通話で、なんでこの人の持ち物ってわかったの?と
リキが聞いてるけど、それは後にしましょう
そして、自信あるように、立っててとお願いしておく
「んーん
わかったわ、あたしの負けよ
ただし、一ヶ月、中をみて進捗具合で無料期間を延長するか決める
その後の話はあとでいいかぃ」
「ええ、私も中を確認して、建物自体はよい物件
そして立地もいいでしょう?
買うことも検討してもいいとおもっておりますの」
「まぁ、それだったら先にお言いっ」
ばしっとおばさんにたたかれた
頬が赤くなり、興奮しているのがよくわかる
無料で掃除して、住みつかれ利益が減るのかと思えば
固定客がつく状態になる
買い手といっても、完全買い取りは不可能らしく
必ず、街の人との契約になるとのこと
私たちの身分が基本的に「冒険者」の根無し草故の処置で
契約期間が終わると、強制的に次の貸し手に移行してしまう
死亡率の高さ、他の街へ定住など帰還のなさの処置といえる
だからおばさんは、一ヶ月無料の掃除人かと思えば
お客さんかと興奮したわけで
かつ、物件をほめることで、私の乗り気具合も理解してもらえたということで
お互い勝の結果となったわけです
「じゃぁ、早速開けるとしようかね」
「お願いします」
おばさんは、家の中にすっとはいり、大きな釘抜き、バールを持ってくる
私たちも、手伝い、すんなりと木の封じは放たれ
鉄と魔法でできた鍵で、扉は開かれた
「じゃぁ、これが最初の契約書ね」
「はい」
クエスト用紙と同じ、ハート型の葉っぱ
それを半分に折り畳み、日付の確認をし、お互いの血を押し付け
鍵の載せる
それで、契約書は完成
やり方は、チュートリアルのように、ここに血をとか表示されてて
視覚的に不思議な感じがするけどスムーズにできて助かる
現実でもこんな風に、やり方を指示していただけたらいいのにと
思ってしまいました
こういう所はゲームの方が優れているものなのですね
ハート型の葉っぱを半分にちぎり、私に半分、おばさんが半分
これで複写式契約の完成
鍵・血・複写文字・契約用紙という4つの符丁で契約がなされた
クエスト用紙はもっと簡易版らしいけど、初期クエストでは口頭契約なのでここまではない
これもその内必要になるだろうから、入手先、金額を確認しておかなきゃいけないだろう
「じゃぁよろしくね、掃除道具が残ってるかどうかはわからないよ」
「ええ、かまいません
それでは、これからもよろしくお願いします」
きゅっと握手をし、お互いいい笑顔でうなずく
ぱたんと、扉をしめて、私は、ふふっと笑う
「一体、君は・・・」
とリキさんは唖然としてるけど、もらえるものを頂いただけです
「宿を借りるときっとお金がかかりすぎるもの
それに、私の親様たちが、来る予定になるので拠点は必要でしょう?」
「ああ、そうか・・・じゃぁ」
「いいえ、ぜひ、一緒にいてくださいませ」
部屋数は十分にあるだろうし
「いいのかい・・・その・・・」
「あなた、そんなにひどいことなさるつもりなんですの?」
そう問うと、彼の頬に赤みが差した
「しないっ・・・つもりだ」
「ふふ、正直でうれしいです」
このままいたら、性欲に負けてる事もあることでしょうし
両親が来ることで、家族団らんの邪魔にと考えるでしょうから
「この埃だらけの家を一人で掃除しろ、なんていわれるのかと思いました」
そういうと、彼は、あ、という顔をして苦笑した
ええ、わかってますよ、性的な問題視したのは
私は、この惨状のほうが、問題視したいんですもの
私たちは、部屋の中を動き、窓を開けていく
薬師の家ということで、キッチンまわりはほぼ、試薬瓶で埋め尽くされていて
他の部屋もにたりよったりな状況
「まだ、鑑定はできないですから、むやみにさわれませんが
最低限の生活ができるようにしませんか?」
「じっと見てると少しわかるのがあるよ」
「そうなの?」
ほら、と見せられた試薬瓶
たしかに、???の文字が多く踊っているけれど
???の草
???の状態を回復
街中でも採れる一般的な植物である
という説明がでてくる
「見るというのが、鑑定のポイントみたいだね」
「そうですね、鑑定スキル、一応手に入りました」
「あ、本当だ」
鑑定スキルのレベルが1取得可能となるまで
二人して手持ちのものをいろいろ調べて
クエストとつぶやき、笑いあった
目先のものについ没頭してしまう癖まで同じとは困った癖持ちである
「で、さっきのはなんだったんだい?」
「ああ、この家の?」
「そ」と頷くリキ
「家を見て、まわりを見たら、クエストマークが出ていたの
びっくりマークっていうの?
だから、この人の持家ということがわかってたし、多少の無茶は効くと思ったの
で、その結果よ」
「そうか、個別クエストか・・・でも、報酬が」
「それは、私の手腕ということで」
「ははっ、たしかに、間違いない」
ばさばさと、シーツを剥ぎ、中庭の窓からリキへと落としていく
夜逃げにふさわしく、全てがそのままで、ひどい惨状なところもあったけど
そこまで悪くはない
むしろ好条件といえる状態で残されている
部屋数は、8部屋
多少広すぎるけど、その内作業所にもなるだろうから
必要な広さになるはず
二階にある部屋は4部屋
すべてにベッドがあり、1つは大き目のベッド
これは両親の部屋予定
残りの3部屋の2部屋は2つのベッドが置かれていた
お弟子さんがいたのかと推測できる
ともかく今、掃除している部屋だけでも、使えるようにして
今晩の寝床を確保するように、ばたばたしていたら
りり、と警鐘石、いわゆるチャイムが鳴った
「はーい」と、降りていくと、ナトよ、とおばさんの声
開けると、いろんな人が、後ろに
「今日から生活すんだったら、足りないかと思ってねぇ
しっかり掃除してくれてるみたいだから、サービスしてあげるわ」
通常はこれぐらいね、とこっそり値段も教えてくれた
ちなみに、生活一式の知識は初期からなんとなくわかるレベルで
トイレを使うのに困る、お風呂が・・・という問題は発生しない
ともかく夢の中のゲーム仕様
日本人作ゲームのせいか、そこら辺は、夢と現実がごっちゃまぜなで存在している
料理は、薪と魔法具の併用
水も井戸と、魔法具で引いてこれる
と、ともかく併用が多い
なので、おばさんは、薪や、魔法具の補充をしにきてくれたわけで
これはかなり助かる
初期支度金として、500Lは支給されているけど
今頂いたものは、2800L分だから、全然足りない
それが1か月分ということ
他に、おばさん特製のパイとお茶、それにシーツを4枚無期限で貸してくれた
玄関周りを掃除したはずが、一気に荷物があふれたけど
その掃除具合は納得のいくようで、にっこり笑ってナトさんは帰って行った
まぁ補給という名の監査でした
その日は、結局、初期クエストを達成できず家支度に追われてしまったけど
衣食住の住は整ったから
また明日から、進めば良い話
リキさんにお休みなさいといい、親様たちにも、家が用意できました
寝ますので、うるさくしないでくださいとメッセージを飛ばし、夢の中で寝るという貴重な体験と
思いながら眠りについた
早速お家ゲット
通常クエストではお家は借りられません
その上、もっとレベルや鑑定・薬師スキルが上がってからのクエストで
中にある薬品関係を手に入れられるという報酬クエでした
ほんと、としちゃん手腕と、にじんだ世界のせいでお家ゲットです!
訂正 2013/10/28