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18.デスゲーム始まる

「主任!」と、真っ青な顔をして部屋に駆け込んでくるのは内村だ


この数日、やつの人柄はなりを潜め

真面目にデバッグに取り掛かり

うっちーさんってあんな真面目な人だったんですね・・・


好きだ、仕事なめてテスターになるっていうぐらい

やりたいゲームですもんね

ああいうところは尊敬します


と、人柄の評価が上がっているのは

この有事だというのにいい傾向だと思っている


内村という男は、軽薄な見た目と

口を開けば人をからかうような言葉が飛び出すが

観察眼と情報量はすさまじく


上司である俺でも胃が痛くなることを平気でいうようなやつだ


だが、こいつは面白い

ずばっと、切る

切り口が、鋭すぎて、喧嘩になるが周りから冷静にみれば

ごもっともなところが多々ある


それに軽薄そうな見た目に反して

ひょうきんなやつで

飲んで、その毒舌を気にせずいれば、おもしろいやつだった


だからいつもの調子を隠せば、この通りといったところか


「しゅーにーん、キモイ

 にたついてる暇あるんすか」

男のじとめなんて可愛いものじゃないが

まさにそんな目で見られ

内村を追いかけてきたシステムを中心にバグさらいしていたやつらが

どやどやと、わめきながら入ってきた


「どこまで話した?」

「主任がきもくて人の話きかねぇ」

「・・・」

再度男どものじとめ


あーはいはい、俺がわるーございました

「で、なんだ」

「やばい」

だから、何がやばいんだ、いつもながらやばいのはお前の口調と見た目だ

黒崎、だから、黒カビとかいわれるんだぞ

もっといいものですってクロコウジとか名乗りやがって


「デスゲになるかも」

「・・・デスゲームにか?」

こくりと、全員が頷く


室内では、何事だと、遠巻きに静観していてやつらも近づいてきた


「何を見つけたんですか、データください」

「動かすのは危険だ」

「どの階層だ」

キーボードに手をかけると、内村が邪魔と、椅子ごと俺をどかし

かとと、と軽快な音をたてて、潜っていった


「ここらの記述があやしい」

「こっちもみて、ここ、ファイルないはず」

と、毒素二人が右に左にモニターを示す


「爆弾だな」

「挑発付きのな」


「急ぎ、プレイヤーにしらせろ、死にたくなきゃ街からでるなって」

「わかった」


パソコンかして、と、黒崎が他のデスクのやつにいい

ああだ、こうだと、文章を作り投下する

数分もしない内に、生活セットを展開するもの

連絡を取ろうとするもので

こちらへのアクセスが集中したが

さらに数分後、アクセスが低下した


「ギルマスや廃人どもがいてよかったな」

そう、彼らが、治安と精神を守った


かなりの量の人たちが、はじまりのエリアに戻る

物価と敵の質が低い

レベル10もあれば、よっぽどじゃないかぎり死なない

データを書き換えられれば、その限りではないが

そのデータの更新日付は変更なく

暴動も起こっていない


それに、生活セットをそこで展開しているから

攻撃もできないはずだ

それで死ぬのはあり得ない


あちらでのデータの消失

コチラとの世界の切断が

個別デスゲームのやり方だろう


そうでなければ、1人が消失したら全員が玉砕だ

中にはいってみれば、所詮はデータ

現実でリンクしている人と中のキャラクターをここからですら

見分けるのは難しい


だが、書き込みがあれば別だ

レベルアップ、街から街への移動

金を使った

何でもいい


それで、アクティブキャラとの個別化は可能だ


今回、罠が仕掛けられているのは

デスゲームとはうまいこといったものだ

ゲーム内で、死ねば現実と永遠に切り離されてしまう可能性だ

ゲーム内のキャラのデータに少しでも書き加えれば

イコールにはならない

そうすると、融通の効かない機械ってやつは、全てはじいてしまう

そして、アクセスできなくなり、ゲーム内でも生き返れないって算段だろう


データとして、生きてる

だが、どれがどのデータで、どこが書き換えられたかなんてわかりゃしない


これが始まってから、何度かバックアップはとった

それで、戻せるか・・・といえば、それも難しい

もし戻したら、1000人全員がなんらかの精神異常を発生しそうだ

もしくは、ゲーム内のことしか覚えていない・・・とかね


と、内村が言った時には、ぞっとしたものだ


「ただのメモ帳あるんすけどー」

と、白石が画面をここんと叩く


「どこ?」

階層をめくりあげ、ここと示し、戻す


「踏み込んだねぇ、シロコウジ」

「踏み込むしかないでしょ、クロコウジ」

と、二人はにやにやと笑う


「開けろ」

「はい」

メモを読み込み開く


結果から言えば、本当にただのメモだ

実行ファイルも、起爆装置もないメモ


だが、俺たちは、そこに書かれているメモに絶望した


「楽しい楽しいゲーム

 のけ者にされた僕らは、ゲームを提供するよ


 さぁ、宝探しを始めて

 僕らがほしいのは、たった一つのタカラモノ


 はやく、あいたいよ


 くれないなら、みぃーんなゲームになっちゃえ

 そうしたら、逆に手にはいるかな?」


◇◇◇◇◇


「あ、見つかったみたいだよー」

くすす、とネットの誰かが笑う


「カウンター動かす?」

「まだいいんじゃない?」

「はやく汁」


と、暴力にもにた騒ぎで、言葉は音としてしか形成しなくなる

そういう意味で、文字での情報のやりとりが

一番確実だと、思う


だが、文字ですら不完全


感情はのせられない


感情をのせられる言葉


どちらにせよ、欲しいものは手に入らない


はやく、宝物を見つけてよ

デスゲ開始ですが、暴動おきず

可哀想に・・・

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