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忘れない日々  作者: 秋野真珠
最後の夏休み
6/14

このあたりでプールと言えば、市営のプールになっている。

大きなプールと、小さい子用の小さなプール。

夏休みの間はどこかの大人が監視役としているけれど、プールに入ってしまえばそんなことも忘れてしまえる。

ノリオたちは更衣室に入るのを省くため、ズボンの下に海パンを穿いてきていた。

服を脱ぎ捨てればすぐにプールに入れる算段だ。

すでに子供でいっぱいのプールに、意気揚々と乗り込んでいくが、一緒に来ていた詩央はジーンズに白いシャツに、日傘を差したままだ。

「姉ちゃん、入んないの?」

せっかく誘ったのに、とノリオが言うが、詩央は呆れた顔で見返した。

「今は小学生の時間でしょ。いいわ、私は小さなプールに足を付けて遊んでるから、そっちで好きに遊んできなさないよ」

ただでさえ子供でいっぱいのプールに、大人まで入るとなると遊ぶどころではない。

昼の1時から3時までは小学生、3時から5時が中高生、とこの辺りでは決まっていた。

そういえばそうだった、とノリオは思い出したが、目の前にあるプールに気を取られて、詩央に見送られて全員で大きなプールに飛び込んだ。

飛び込み禁止なんて看板は、誰も守ったことがないのは監視員も承知だった。

最初は何分潜れるか、息継ぎなしでどこまで泳げるか――と競争をしていたが、そのうちにリツが小さいプールを気にし始めた。

「詩央ちゃん、ひとりでつまんなくないのかな」

「えー?」

言われて、全員が詩央を振り向く。

大きいプールからこっそり顔だけ出してみると、小さなプールの縁に座って日傘を差して、水面を見つめている詩央がいる。

その表情は、こちらからは解らない。

楽しいのか楽しくないのか、ノリオたちには解らなかった。

どうしようか、と考え込んだとき、プールを囲うフェンスの向こうに、知っている顔があるのに最初に気付いたのはリツだ。

「――あの男、朝、詩央ちゃんとあいさつした男だ」

「え?」

「どこ?」

指さした方向には、確かに朝見た暗そうな大学生が立っていた。

そして、その視線は詩央の背中に向いている。

一瞬たりとも、違う方向には向かない。

ノリオはなんだかお腹がむかむかして、顔を思いっきり顰めて、そしてプールを飛び出した。

全員が慌てて後を追う。

向かったのは、自分たちの脱いだ服と荷物が置いてあるところだ。

そこに持ってきていた水鉄砲をノリオが持ったとき、全員がその意図を知る。

自分たちも武器を手に、プールにそれを付けて弾を充填した。

ここはプールだ。水なら、いくらでもあるのだ。

「攻撃開始―!」


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