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*クリスマス・ナイト*

作者: 快丈凪


「信じられないっ!サイテー!!」


バンッ!と喫茶店のテーブルを叩く女。


その前に座っている男は特に動揺するでもなく、ふてぶてしい顔をして彼女を見ない。


彼女はそれを見て余計に腹が立ったのか、テーブルの上のコップの水を男に勢いよくかけ、振り向かずに店を出た。


後ろから男の怒鳴り声、周りからは驚いた顔や冷たい視線……。彼女はそれらを全て無視した。


彼女は教会へ行った。

彼女の両親はカトリックで、彼女も小さい時から毎週日曜日に教会へ通っていた。なのでこんな時は神様の側に居たいと思った。


夜更けの教会はナゼか鍵がかかっていなかった。いつもは厳重に管理しているハズだが……。


彼女は一番前の席に座り、ステンドガラスを眺めた。

月明かりに照らされ、夜だというのにステンドガラスはとてもよく見える。

それを見ていると涙があふれてきた。


今まで、彼女はずっとさっきの男に尽してきた。……それなのに……!

そう思えば思うほど、涙は止まらない。

むなしくて……でもどうしようもないもどかしさで、更に彼女は泣いた。



ガチャッ


その時、教会のドアが開いた。


「誰か、いるんデスカ?」

若い男の声。


反射的に彼女は泣き止む。


コツ、コツ、コツ……


静かな教会は、足音がよく響く。

だんだん足音は近づいてくる。


……コツッ…………。


足音がとまる。


彼女は顔をあげた。そこには、サラサラとした金髪で神父の格好をした外国人が立っていた。


彼は彼女を見る。

「泣いているんデスカ?」

片言の日本語。

「違い……ます……」

不意打ちをくらった彼女はキチンと答えられない。

「でも、アナタ泣いてる。涙がでてマス」

心配そうに近寄る金髪の神父。

ドキッとする……。


「大丈夫です……それより、アナタは誰ですか?」

目をそらし、話題を自分から遠ざけようとする彼女。


「オゥ!失礼シマシタ!わたしはキース。キース・エレオントといいマス。教会の鍵を閉め忘れて閉めに来まシタ。アナタは?」

やわらかい笑顔で言うキース。

「私は……山野辺美雪です」

少しオドオドしながら言う私。

「ミユキですネ!カワイイ名前デス!でも、泣いてたらもったいないデス。アナタ、笑顔の方が素敵デス!」


何の抵抗もなく、ニコニコしながら言うキース。

「……私、笑える気分じゃないの」

美雪はため息混じりに言った。

「ナゼですカ?今日はクリスマスですヨ!」

無邪気に笑うキース。

「そうね。神がお生まれになった日だわ。……でもね、私はさっき恋人と別れたの」

美雪はそう言いながらうつ向いた。


その様子を見たキースは、さっきよりしんみりとした声で言った。

「彼のこと、愛していたんデスネ、ミユキ」

「愛してたのかな……一方的過ぎたのかも。私以外にも3人恋人いたの、その人」

「ミユキは愛してマシタ。だから泣いてたんでショ」

「そうなのかな……」


不思議だ。

さっきまで忘れ去りたい程に忌まわしかった事を、平気で口にしてる。

キースになら、言える。

キースだから、言えた?


「神様はちゃんと見ておられマス。ミユキのことも」

キースは美雪に向き合って続けた。

「クリスマスには笑顔がたくさん。でも、泣いてる人は少ない。だから、神様は他の人よりもミユキを気にとめて下さいマス」

「キース……」

「だから、安心して下サイ!ミユキの事、神様はもうご存じデス!神様も心配されマス!ミユキは笑顔になって下サイ!」

キースは一生懸命に言う。

「……そうね。そうだわ、ありがとう、キース。元気が出た」

思わず笑顔になる。


「ア、ミユキ、笑いマシタ!やっぱり笑顔がキュートなんですネ!」

「……やめてよ、キース……照れるよ……」

「そうデスカ?」

不思議そうなキース。

「……私、もう帰る。だいぶ落ち着いたし」

「それは良かった!そうするがとっても良いですヨ」

相変わらず片言のキース。

「うん、ありがとね、キース」

立ち上がり、ドアを目指す私。


ふと、気になって聞いた。

「ねぇ、キースは神父さま?今日の礼拝には居なかったよね?」

「おとといからこちらに来まシタ。でも、今日は用事があって出られませんデシタ。来週からは出マス!」

「そう……私、毎週来てるの。だから、また来週会いましょうね!」

「それは楽しみデス!また来週デス!グッバイ、ミユキ!」


教会を出た私は、心が暖かった。

今日は失恋したハズなのに、心がポカポカしている。

きっとキースのおかげだ……。


そんなことを思いながら、美雪は家に帰った。


美雪は来週、礼拝が面倒で確か礼拝の時間に友達と遊ぶ約束をしていたけどキャンセルすることにした。


それはモチロン、来週の日曜日にまた心が暖かくなる笑顔が見たいと思ったからだ。



いかがでしたでしょう?ほのぼのした話が書きたくて今回の話を思い付きました。ちなみに今年のクリスマスは本文どおり日曜です(笑)

キースの片言な日本語は、留学生の私の友達が実際に話す日本語をモデルにしました☆

ではまたお会い出来る日を楽しみにしています!それでは!

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