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第3話 武闘派女神の交渉術

 考えろ考えろ考えろ。


 今すぐ帰ることは難しくても、こんなわけわからんところで軟禁生活なんて冗談じゃない。


「女神様の安全を考えてのことです」


 うっわ、ありがた迷惑!


 だがしかし、主席書記官であるレドモンドさんが口にした「安全」という言葉に、私の中でウルトラCが閃く。


 ってか、ウルトラCって今どき使わない?


「つまり、この身が安全で、危険にさらされなければ自由に動いてもいいと?」


 ここの人たちは私を“守るべき対象”として考えているんだ。


 なら、そうでないことを証明するまでよ。


 私は辺りを見まわし、この広間で一番屈強そうな、戸口の側に立つ筋肉自慢っぽい近衛兵の近くまで、靴を脱いでツカツカと駆け寄った。




「ちょーっと失礼♡」




 部下の田所に『凶悪っす……』と言われた、任意同行を求める際の笑顔を近衛兵に向け、適当な方角を指で指す。

 相手の注意がそれた一瞬の隙を突いて素早く手から槍を奪い、床に投げ捨て、立派な腕に絡みついた。


 呼吸を整え、ぐっと足裏を踏ん張らせる。ハァーーー……せいやっ!!


 (あれ?なんかいつもより調子いいかも。沢山寝たからかな??)


 相手の身体が宙に浮いた瞬間、ドレスの肩が破れる音がしたので、あとでシャルロットに謝らなければ。


 およそ180cmのがっしりとした巨体が、ドンッと音を立て倒れ込む。


 理解が追いつかない様子で床で呆然とする近衛兵のマッチョ君は悪くない。なーにも悪くない。


 正面に回り込み、突然ブン投げてしまったことに対して一言謝ってから、私は息を大きく吸い込み、周りにこう宣言した。




「自分の身は自分で守れるので、この国での自由を要求します!!」






 ◆◆◆◆◆






 自分としては、キマった〜〜〜!と思ったんだけど、返ってきた反応は思いもよらないものだった。




「女神を見に来たのに、なんだ!このガサツな女は!!」




 なんだって何よ。そっちこそ誰なのよ?


 口火を切ったのは見知らぬ小太りの中年男性だった。


 興奮して赤くなった顔のせいか、顎なのか首なのかわからない襟口に巻いた白のスカーフが苦しそうだ。




「大体みんなして女神女神って、私は普通の人間だし、貴島凛々子って名前もあるんだから!好きで女神やりに来たわけじゃないわよ!!」




 私も大概短気なのをよく注意されたっけ。




「まぁまぁ、お二人とも落ち着いて。女王の御前ですよ」




 この人は知っている。ウィリアム騎士団長と呼ばれていた男性だ。




「女王。進言をお許し頂けますか」


「……申してみよ」




 ウィリアム騎士団長は神妙な面持ちで女王に発言した。




「女神様の行動範囲を広げていただくよう、私からもお願い申し上げます。もしこのまま軟禁を強いるようであれば、先程披露された見事な体術で逃走される可能性がなきにしもあらず……それならば、私が護衛できる時間帯は、責任をもって外にお連れいたします」


「もし女神様に何かあった際は、どう責任をとる?」


「……取るに足らないこの命ですが、如何様にも」




 い、命って!いくらなんでも重すぎるでしょ!!




「はぁ……仕方ありませんね。あなたの命と女神様の命では天秤にかけるまでもありませんが、あなたが言うようにどこぞへ逃走されるよりは良いでしょう。レド、後で女神様の居室の外鍵を取って差し上げなさい」


「御意にございます」


 えっ、あの部屋外鍵まで付いてたの??反抗しといてほんと良かった。


 お目付け役はいるにしても、軟禁から保護観察くらいにはゆるくなった処遇にホッと胸を撫で下ろす。


 昨日は暗くてよく見えなかったけど、ターコイズの瞳を宿したやたら美形の団長さんには感謝しなくては。




 こうして一波乱(?)はあったものの、女王主催の報告会とやらは無事に終わった。




 なにごとも最初が肝心ということで、私の呼称も『女神様』はよしてほしい、と伝えたところ、『凛々子様』は発音がしにくいと言うことで『リリ様』(ほんとは“様”も勘弁してほしいけど、そこは譲歩した)に落ち着いた。




 女王は退席する際、




「新月を迎える前に、次は中庭でお茶会をしましょう。ごきげんよう、リリ様」




 とだけ言い残して、レドモンドさんと去って行った。






 ◆◆◆◆◆






 報告会の後、燕尾服を着た執事長のロイヤーさんというおじいさんが、喉が乾いたであろう客人をもてなすため、飲み物の入ったグラスをメイド2人と共に後方の扉から運んで来た。


 見た目は70歳をゆうに超えているのに、武道でもやっていたかのような姿勢の良さだ。


 付き従うシャルロットに小さく手を振ると、パッと笑顔を返してくれたけど、すぐドレスの肩口に気づいて口元を覆っていた。


 ほつれに気づかずドレスを着せてしまったのかと、後で私が謝るまで胃が痛かったらしい。


 そうそう、この日集まったお歴々は関係者ということで、私をガサツ呼ばわりした中年男性は、どうやらこの国ではそこそこ有力な貴族なんだそうな。


 職業柄、顔と名前を覚えるのは得意なんだけど、めちゃくちゃ長くて舌を噛みそうな名前だったので、勝手に心の中で“ブーさん”と名付けた。


 そのブーさんはワインをイッキ飲みして私にこんな捨て台詞を吐いた。


「古より女神は、その神聖な力で真実を見抜くとされている。“新月の審判”で化けの皮が剥がれるのが楽しみだ!」


 んんん??女神っているだけでよかったんじゃないの!?

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