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【完結】婚約破棄された公爵令嬢は、婚約者候補を辞退したら、婚約者様が「お断り」と叫んだ  作者: ましろゆきな
第三章:英雄降臨編 

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第九話:英雄の降臨と、揺るがぬ愛の証

 1. 【追撃】「救国の英雄」の真実


 ジークヴァルトは馬も使わず、ただ魔力の爆発的な推進力だけで賊を追った。


 背後から馬を走らせて追うハンスとグレーテルは、その背中を見て戦慄する。


 無言で進むジークヴァルトだが、その心中は、彼が通り過ぎた後に倒れる周囲の木々や、亀裂が入る地面が物語っていた。


(これは、あれだ……。嘘泣きも甘えも一切ない、戦場での閣下だ。……追い付いた瞬間、あいつらはこの世から『消される』ぞ)


 ハンスは馬上で緊張で体が強張るのを感じた。鎧で身体を覆い尽くしても、砦で城を取り囲っても、規格外の英雄ジークヴァルトには問題にならない。今回は相手はただの賊だ。どんな結果が待っているか、想像し難いものではない。


(賊の行く末は自業自得でいいとして。この人間兵器の後始末は俺がするんだが、どうしてくれんだよぉ……)


 2. 【アジト】人質エレオノーラの「宣告」


 闇ギルドの隠れ家となっていた廃砦の奥。そこには、勝ち誇った笑みを浮かべるエーレンライヒ侯爵と、その娘ベアトリクスの姿があった。


「おーほっほ! 見てご覧なさい、この無様な姿を。ジークヴァルト様も、こんな女の正体(呪い)が解ければ、すぐに私を迎えに来てくださるわ!」


 猿轡を外されたエレオノーラは、罵倒を浴びせられても、ただ掌の中のリボンを慈しむように握りしめていた。その瞳には、恐怖ではなく、深い同情の色が浮かんでいる。


「……ベアトリクス様。今のうちに逃げたほうがよろしいですよ。……いえ、もう遅いかもしれませんわね」


「なんですって?」


「あの方は、私の前以外では『感情』という便利なブレーキを持っていらっしゃらないのです。……あの方がここへ来た時、あなたたちが『人間』のままでいられる保障はありませんわ」


 エレオノーラが静かに告げたその瞬間、砦の空気が――「重さ」を変えた。


 3. 【救出】「物理法則の無視」という名の殲滅


 ドォォォォン!! という爆発音さえ、後から追いかけてくる。 砦の堅牢な外壁が、何かに衝突されたわけでもなく、ただ「そこにあることが許されない」かのように粉々に弾け飛んだ。


 砂塵の中から現れたのは、一振りの剣も抜いていないジークヴァルトだった。


「ひっ……!? じ、ジークヴァルト様……!?」


 ベアトリクスが駆け寄ろうとしたが、その足は一歩も動かなかった。 ジークヴァルトから溢れ出す殺気――物理的な質量を持った魔圧が、室内の重力を数倍に跳ね上げ、賊も、侯爵も、ベアトリクスも、その場に膝をつかせたのだ。


「……あ……あああ……」


 侯爵は声も出なかった。 目の前にいるのは、自分が利用しようとした「英雄」ではない。 一切の慈悲を削ぎ落とし、ただ敵を殲滅するためだけに存在する、この世で最も美しい死神だ。


 ジークヴァルトがただ一歩、踏み出す。 パキパキと音を立てて床の石材が砕け、彼の視線が侯爵親子を射抜いた瞬間、彼らはあまりの恐怖に心臓が止まる錯覚を覚え、白目を剥いて卒倒した。


 賊たちに至っては、戦う意志どころか「自分が存在していること」への罪悪感に苛まれるほどの精神的圧迫を受け、泡を吹いて転がっている。


 ジークヴァルトは、彼らに一瞥もくれず、ただ真っ直ぐにエレオノーラの元へ歩んだ。


 4. 【決着】全肯定による「再起動」


「……ノーラ」


 その声は、深淵の底から響くような、低く、冷たいものだった。 ジークヴァルトは、自分の手が血に汚れ、心が狂気に満ちていることを自覚している。彼女にこの姿を見られた今、もう「優しい夫」のふりはできない。


「見ての通りだ。……これが、君が愛した男の正体だ。……さあ、私を化け物と呼んで拒絶しろ」


 ジークヴァルトは、彼女に突き放されるのを待っていた。それが自分への正当な罰だと言わんばかりに。 しかし、ノーラは縛られていた縄を(ジークの魔圧で勝手に切れていた)振り払い、泥に汚れたリボンを握りしめたまま、彼に飛び込んだ。


「……バカな人。……わたくしのために、こんなに怒ってくださったのでしょう?」


 ノーラが彼の頬に手を添え、優しく微笑む。


「10年も前から私を想い、こうして助けに来てくださった。……あなたは、私の世界で一番かっこいい騎士様ですわ」


 その瞬間。 砦を包んでいた絶望的な魔圧が、霧散するように消えた。


「……え? 嫌じゃ、ないのか……? 怖く、ないのか……?」

「ええ。大好きですわ、ジーク」


 数秒の沈黙。 そして、砦中に響き渡るような絶叫が上がった。


「ふえぇぇぇぇぇぇん! ノーラぁぁぁぁぁ! 怖かったよぅ! 君に嫌われたら死のうと思ってたんだよぅぅ!!」


 秒速で「号泣モード」にジョブチェンジした公爵は、ノーラの膝に縋り付き、子供のように泣きじゃくり始めた。


 後から駆けつけたハンスは、更地になった砦と、主君のあまりの変わりっぷりに、天を仰いで胃を押さえた。


(これだ……。これが俺が一生かけて後始末しなきゃいけない『日常』なんだな……)


 隣でグレーテルが静かに、ハンスの手に自分の手を重ねた。


「お疲れ様です、ハンス。……報告書、今回は『大規模な魔力嵐による自然崩壊』でいきましょうか」

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございます!


ジークヴァルトの執着愛(と泣き顔)に付き合ってきたこの物語も、明日、いよいよ最終回を迎えます。


最後に彼は報われるのか、それともエレオノーラに完璧に「お断り」されてしまうのか……。 胃痛が限界の副官共々、最後まで見届けていただければ幸いです!


【大切なお知らせ】


実は、完結の翌日(1/26)から、新連載を「2本」同時にスタートさせることになりました!


一つは、今作の「ある人物」の娘が暴走するラブコメ。 もう一つは、誇り高き悪役令嬢が護衛騎士を「断罪」するシリアスな物語。


本日、活動報告にて「特製ポスターイラスト」を公開しました! どちらも自信作ですので、ぜひ活動報告を覗いて、予約ブクマしていただけると嬉しいです!


【活動報告はこちらから】

https://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/3572255/


【1/25 21:00 投稿】最高の大団円でお会いしましょう!

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