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【完結】婚約破棄された公爵令嬢は、婚約者候補を辞退したら、婚約者様が「お断り」と叫んだ  作者: ましろゆきな
第三章:英雄降臨編 

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第十話:英雄の帰還と、終わらない受難の祝祭

 1. 【公文書】ハンス、嘘を真で塗り固める


 砦の事件後、ハンスは丸二日間かけて報告書を書き上げた。


『賊の砦が消滅したのは、大規模な魔力暴走による自然現象である。

 なお、現場にいた賊および侯爵親子は、閣下の放つ『慈愛の光(殺気)』を間近で浴びたことにより、自らの罪を深く恥じ入り、精神に著しい変調をきたしたため、再起不能なったと考えられる』


 全くの真実ではなかったが、全くの嘘でもない。

 ハンス・ミューラー渾身の報告書は速やかに国王の手に届いた。


 王宮の執務室でそれを読んだ国王は、ガタガタと震え出した。


「陛下、どうかなさいましたか?」


「……い、いや、何でもない」


 宰相の気遣うような目を避けるように背を向ける。その目は遠い青空に向けられた。


(……ミューラー卿よ。お前の苦労がよくわかった。だが、『慈愛の光』とやらで、堅牢な建物が一瞬にして更地になるわけなかろう? これはつまり、アイゼンベルク公爵は、妻の髪飾りが汚されただけで一国を滅ぼせるほどの力を行使するということなのだな……?)


「救国の英雄」はとんでもない諸刃の剣だと改めて国王は認識した。


(アイゼンベルク公爵――いや、公爵()()の機嫌を損ねてはこの国に未来はない)


「宰相、今回の一件でアイゼンベルク公爵夫妻は我が国の未来を救ってくれた。この素晴らしい功績を称え、特級国家勲章を授与しようと思う」


「は、はぁ……?」


「うむ、それだけでは足らぬな。この機会に王家主催で盛大な公爵夫妻の結婚式を行おうではないか!」


 晴れやかに宣言する国王に宰相は否やとは言わなかったが、その乾いた笑いに首を傾げるのであった。


 2. 【世紀の結婚式】号泣する英雄と、微笑む聖女


 国王の肝煎りで執り行われた結婚式は、王都中の貴族が「英雄への忠誠」(と恐怖)を誓う場となった。


 豪華絢爛な大聖堂。繊細なレースと刺しゅうで装飾が施された豪華な純白のドレスに身を歩むエレオノーラは、まさに女神の再来と呼ぶに相応しい美しさだった。だが、その横に立つ新郎は、誓いの言葉を述べる前からハンカチで顔を覆っていた。


「……うう、ノーラ。君が、君が美しすぎて……。この命は今日、幸福のために燃え尽きるのではないか……?」

「ジーク、大丈夫ですよ。わたくしが、ずっと手を握っていますからね」


 聖女の微笑みで「再起動」する英雄。参列した貴族たちは、そのあまりの「変貌ぶり」に言葉を失ったが、国賓席の国王だけは末席に控えるハンスと遠い距離ながらも深く頷き合い、互いの健闘(胃痛)を称え合った。


 3. 【勲章とプロポーズ】ハンスのケジメ


 披露宴の喧騒から少し離れたテラス。ジークヴァルトは、先ほど国王から手渡されたばかりの、金剛石が散りばめられた特級国家勲章を、迷いなくハンスに投げ渡した。


「ハンス、それは君が持っておけ。私の最大の功績は、勲章を貰うことではなく、ノーラに出会えたことだ。……それは、君の『忍耐』への報酬だ。プロポーズにいいだろう」


 ハンスは言葉もなく、その重みを握りしめた。 そして、ジークヴァルトに深く頭を下げると身を翻して走り出す。

 その先にはたった一人の代えがたい戦友がいる。――給仕の合間に一息ついていたグレーテルの前に立ち、無骨にその勲章を差し出した。


「グレーテ。俺は一生、あの変態……閣下の尻拭いで人生を終えるだろう。君には苦労ばかりかけるかもしれない」 ハンスは真っ直ぐに彼女を見つめた。


「……それでも、俺の妻として隣にいてくれないか。胃薬の補充は、俺が一生をかけて君の分まで用意する」


 グレーテは一瞬、きょとんとした後、これまでにないほど柔らかな笑みを浮かべて頷いた。


「……はい。喜んで、ハンス。……でも、胃薬の配合は私の方が上手ですから、お任せくださいませ」


 4. 【新居祝い】愛の歴史館という名の「呪い」


 数ヶ月後、ハンスとグレーテの結婚祝いとして贈られた新居。そこには、ジークヴァルトからの「真心」という名の嫌がらせ……もとい、お祝いが添えられていた。


「ハンス! 君の新居の隣に、私とノーラの愛の軌跡を綴った『アイゼンベルク公爵夫妻・歴史館別館』を建てておいたぞ! 執務で疲れた時は、いつでも私のノロケを見に来ていいからな!」


 新居の庭から見えるのは、ジークとノーラが最初に出会った時の「例のリボン」を100倍にした巨大な黄金のモニュメント。


「……誰が仕事帰りに上司のノロケを見学するんだよぉぉぉ!!」


 ハンスの絶叫が王都の空に響き渡る。その横でグレーテは、「……まあ、掃除が大変そうですわね」と冷静に言った。


 5.女神たちの降臨


 数年後。アイゼンベルク公爵家の庭園。


 そこには、ノーラに生き写しの小さな女の子ジークリンデが、ジークヴァルトの指を握って歩いていた。


「パパ、お花! はい!」

「あああぁぁぁ……! 娘が私に花を! ノーラ、見てくれ、我々の天使が私に慈愛を授けてくれた……!!」


 芝生に跪いて号泣するジークヴァルトと、それを「まあ、ジークったら」と笑って見守るノーラ。 その平和カオスな光景を、隣の屋敷のテラスから眺めている二人。


「……今日も閣下は元気ですね、ハンス」

「……ああ、グレーテ。王宮には『英雄、今日も家族愛という名の国防に専念中』と報告しておこう」


 ハンスは、妻が淹れてくれた「特製・胃痛に効くお茶」を飲み干し、静かに目を閉じた。 ジークヴァルトとノーラ、そしてジークリンデ。彼らが幸せである限り、この国は色んな意味で安泰なのだ。


 ――「救国の英雄」とその「戦友」たちの受難は、どうやら一生終わりそうにない。

最後までお付き合いいただき、本当に、本当にありがとうございました……!


もしジークヴァルトの執着っぷりに笑っていただけたら、下の【☆☆☆☆☆】をポチッとしていただけると、作者が泣いて喜びます……!


執着しすぎた英雄ジークヴァルトと、それを華麗に(?)お断りし続けたエレオノーラ。 二人の行く末を見守ってくださった皆様の応援が、完結までの大きな原動力でした。


彼らの物語はここで一区切りですが、ジークヴァルトの「執着の遺伝子」は……もしかしたら次の世代に引き継がれているかもしれません。


【明日から、新たな物語が始まります!】


寂しがる暇を与えませんが(笑)、明日1月26日(月)より、新作2本を同時連載開始します!


『悪役令嬢ですので、護衛騎士を断罪しました』

【URLはこちら】https://ncode.syosetu.com/n6884lj/



『父が英雄、母が聖女な私、愛する王子様を監視まもりすぎてます』

【URLはこちら】https://ncode.syosetu.com/n9942lo/


先ほど「活動報告」にて、両作品の特製ポスターイラストを公開しました。 この物語を気に入ってくださった方なら、きっと楽しんでいただけるはずです。


ぜひ、マイページや活動報告からチェックしてみてください!


また次の物語で、皆様とお会いできるのを楽しみにしています。


2026.01.25 ましろゆきな

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