つながる
7話 「つながる」
泣き崩れている優太の横に、到着した母の幸子が立つ。
病院のベッドに横たわる美穂の顔は、
眠っているようにも見えるが、真空パックされた肌感。
あの柔らかさも、温度も、どこかへ行ってしまった。
「……なんで……」
一層声を上げて泣く優太。
「美穂からもうすぐ着くって、メールも……」
「ア、アナフィ、ラキシー、ショック、だって」
「アナなんとかショックって、蜂にさされると死ぬとか、
アレルギーで死ぬとか、最近ニュースでやってるあれ、の事?」
「あいつ、つわりで……赤ちゃん……あかちゃん」
「えっ!……赤ちゃんいたの!」
優太はしゃくり上げて話す事も出来ないほど泣いた。
小さくて、痩せてる、この子の……幸子はそっと、お腹に手を置いた。
「つわり辛かっただろうに……無理して……
会いたかっただろうに、抱いてあげたかったよね……美穂」
幸子も泣き崩れた。
葬儀後一度断られていたが、納骨で会った優太を見て、思わず口から出た。
「一緒に住まない?」
「そうだなぁ」
やつれた優太も四十九日過ぎて、
少しずつ前に進もうとしているんだと思った。
何度どうして、どうして、どうしてと問いかけてみても、
堂々巡りを繰り返すだけだ。
息子に寄り添う、この子が好きだった。
美穂は帰ってこない。
赤ちゃんに会えることもない……。
私の孫。
せめて二人一緒に天国で笑ってほしいと、
美穂の小さな写真に、好きな物を供える。
「じゃ買い物にでも行くか。
美穂、今日はなにがいいかな」
救急車に付き添ってくれたのは、このスーパーの店長だと思い出した。
一言お礼でもと裏に回ると、話声が聞こえてきた。
「守さん、ほらあそこの家、大きなミモザがあるでしょ。
アレルギー出る人もいるらしいよ。この前、若い女性が倒れてて、救急車付き添ったんだけど、
妊婦でつわりのところにアレルギーが出て、アナフィラキシーショックで亡くなったって」
「えっ、そうなんですか」
姉ちゃんがしつこく”ミモザ”を気にして警察沙汰にもなったばかりだ。
いつもの空想妖精の話まで持ち出すから、聞き流していたところだった。
がらんと物が落ちる音、
「あっ奥さん」
店長が気まずい顔をしている。
幸子はこれまで腑に落ちなかったアナフィラキシーショックが、強烈にミモザと繋がった。
顔を引きつらせ、走って行った。
「あれ、やばくない?沢村さんち行ってるよね」
俺も早く姉ちゃんに知らせなきゃ、急いで車を走らせた。
つづく




