再会
家の周りには、もめている声を聞きつけた野次馬が何人かいた。
声のする庭へ駆けつけると、大きなミモザを背に、年配の女性が腕を振り払っている。
「あっちへ行って!」
「その木は危ないです。話を聞いてください!」
若い作業着の女性は、スコップを握りしめていた。
顔は赤く、涙がこぼれそうだ。
「まあまあ、一旦離れましょうか」
蓮子は年配の女性の前に立ち、柳はスコップを押さえて間を取った。
「お巡りさん、この人捕まえてください。この木を勝手に掘ろうとするんですよ!」
柳で塞がれていた小柄な女性が顔を上げる。
「この根は腐ってる可能性があるんです。ほら、こんなに葉が変色して……
早く処置してあげないと、ミモザが苦しんでしまうんです」
多恵の声は震えていた。
あの夜、妖精のときちゃんが言っていたのだ――「この子、助けてあげて」って。
蓮子が大きな声を上げた。
「あら! あんた、どん亀!」
場違いな一言に三人が固まる。
どん亀……そういえば、昔、そう呼ばれていた。
ぽかんとしている柳を横目に、
「……どちら様で?」
「でた―、その顔。変わってないな、どん亀。小学校で同級生だった、新門蓮子だよ!」
「……あっ、新門さん。えへへ」
蓮子は「うわ~」と嫌なものを見たようにのけぞった。
「ん、んっ。先輩」
柳の合図で勤務中だったことを思い出す。
「ごほん、ごほん。では詳しくお話を伺いますね。
ひとまず、奥さん、部屋で落ち着きましょうか」
蓮子は息の荒い沢村の背に手を置き、家の中へ入る。
「君はこっちで聞こうか」
柳はパトカーのドアを開け、多恵を後部座席に座らせた。
多恵は名刺を出し、ガーデニングを行った経緯を説明した。
「あなたが……。すっきりとした、とても気持ちの良いお庭でしたよ」
「そう言って頂くと嬉しいです」
「作業は完了したんですね。それで、なんでまた?」
「……信じてもらえないと思うけど……妖精のときちゃんが、
“ミモザが危ない”って……そう言ったんです」
柳は一瞬、返す言葉を失った。
その瞳は真剣で、嘘をついているようには見えない。
「……そうですか」
多恵はもう庭には近づかないよう注意され、しぶしぶ帰っていった。
柳は、その背中が角を曲がるまで見送る。
「たまに、ああいうこと言う奴いるんだよな……」
でも、ミモザの枝が小さく揺れた。
風はないのに、と柳は思った。
――つづく




