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花とサイレン

第2話 トラブル


多恵のあまりにもゆったりした性格を気に掛けていた両親は、

もっと自然の多い場所に暮らすことを選んだ。


そんな両親の思いなど知りもしない中学1年生の多恵は、

トルコキキョウの種を採り、大切に植木鉢を抱えて、

秋に地方へ引っ越しをした。


夢中で世話をしたトルコキキョウの種は、

花を咲かせることはできませんでした。


でも、新しい家には小さな庭がありました。

多恵は道や山で気に入った花や草があると、庭に植えていきました。

失敗すると調べて、試して、また失敗して……。


それでも多恵は、土に触れることをやめませんでした。

季節ごとに変わる土の匂いが、なぜか心を落ち着かせてくれ、

芽吹く瞬間も、ふっくらとしたつぼみも、とっても好き。


そうして花と接しているうちに、

多恵は大人になりました。


「多恵ちゃん、上手だね。おばちゃん家の庭もちょっとやってくれない?」

「雑草がもう大変で、どうにかならないかね」

「孫が生まれたよ。記念に植えるには、なにがいいかねえ。相談に乗っておくれ」


近所に頼まれてやっているうちに、

自然と自営になっていった。


園芸サービス業 クローバー(有)


多恵への心配がほどけたように、

突然、父が倒れて亡くなった。


母はショックを受けたうえに、

おばあちゃんの痴呆が進み、

「戻ってきて」と言われると、

最後はそばにいてあげたいと、四十九日が済むと出掛けていった。


一度にいくつものことが重なり、

理解が追いつかない多恵は放心状態。


「仕方ないなあ。俺も一緒にやってやるよ」


営業職を辞めた一つ違いの弟・守が、

クローバーの部長として全般を支えてくれた。


「守~。恩に着ます♡」


多恵は昔から、守に助けられてきたお姉ちゃんでした。


***


「トラブルの通報があり、現場に向かってくれ」

「近いですね」


一つ後輩の柳隼人・巡査部長が助手席で確認した。


「了解。急行する」


巡査の新門蓮子はサイレンを鳴らし、アクセルを踏み込む。


蓮子は口が災いして、後輩に昇任を抜かされ、むしゃくしゃした気分だ。

しかし、こればかりはどうしようもない。


ご先祖様は、江戸時代、大名火消として名をはせた新門辰五郎。

蓮子はそのご先祖様が大好きだ。


人の役に立ちたくて、警察官になった。


「隼人がなんだ。さっさと解決して、昇進するぞ~!」

「心の声が駄々洩れですよ。さっさと行きましょうか」


つづく

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