新しい扉
11話 『 新しい扉 』
「やめとけー姉ちゃん、その話は、無し無し」
「柳さん、ちょっと来て下さい。こっち、こっち」
手招きされた柳は、チラチラ蓮子を見る。
蓮子は随分大胆になった多恵に、にやにやしている。
柳は多恵の部屋に入った途端、別空間にいるようだった。
色んな匂いが混ざり合い、ほのかに優しい調合だ。
部屋に入り込む光が、まるで意思を持っているように、
それぞれの植物に、丁度良く降り注がれている。
本棚も植物に関するものばかり。
「本当に、植物が好きなんですね」
シャラ〜ン──鈴の音。
(タエ、だれ?彼氏?)
「そんなんじゃないよ。ほら、前に話した、柳さん」
柳は一瞬、息が止まるほど、驚いた。
シャラ~ン パタパタ。
ときは柳の周りを飛んで匂いを嗅ぐ、そして目を閉じて、周波数を感じている。
「この人、懐かしい匂いがする」
「そうでしょ!柳さんなら分かってくれる気がしたの」
パタパタ シャラ シャラ
(う~ん、なんだろうこの感じ、知ってるような……)
「へー、いたんだね妖精」
ときと多恵、同時に柳に顔を向けた。
柳は手のひらをそっと、ときに差し出し
「ほら、止まってみて」
ときはキャッキャ楽しそうに、一度高く飛び上がると、
くるっと回わり、チョコンと手のひらに立った。
フリフリのスカートをつまんで、
「花の妖精ときでーす!トルコキキョウからタエがつけてくれたの」
「俺は柳、よろしくね」
帽子のつばを人差し指で少し上げ、挨拶した。
「柳さん、見えるんですね!」
「いや~びっくりしたよ。初めて見た」
多恵はもしかしたらと言う思いもあったから、ときの話もしたし、部屋にも入れた。
それにしても柳は、驚いているようには見えない。
「実は俺のお姉さん……いや、そう呼ばないと怒る、おばさんがいて。
俺に、あんた子供だから見えるでしょ、ほら妖精!
なんで見えないのよ!って」
少し恥ずかしそうに、
「俺は嫌いじゃなかったけど、家族からは変人扱いされてた」
守と蓮子も部屋に入ってきた。
「若い二人が部屋に籠ってるのはいけませんよ~、逮捕しちゃうぞ!」
「あっ、それ、面白い」
二人は結構相性がいい。
多恵はもしかしておばさんは、園芸の仕事してるか聞くと、
「前は小学校の先生してたけど、今はなにしてるかな?」
多恵とときは顔を合わせた、もしかして。
「おばさんのお名前は?」
「大山広子」
「先生!!」多恵と蓮子の声が揃った。
カチッ。
多恵の胸で、何かの鍵が開いた。
「会いたい。ぜひ、会わせて下さい」
1巻 完




