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時を越える騙されやすいスパイ

掲載日:2025/08/29

彼の名は誰も知らない。暗号名はただパージュと呼ばれる。

任務は単純だった。敵国が極秘裏に開発したタイムマシンに潜入し、その機能を奪い取ること。

だが、問題が一つ。

パージュは致命的にだまされやすい。

カード詐欺、振り込め詐欺、クーポン詐欺……訓練期間中だけでも六回は引っかかった。上層部は「逆に目立たないだろう」と妙な理屈で彼を送り込んだ。

第一の時間‥。

マシンの中で彼を迎えたのは、親切そうな情報屋だった。

「未来で君は勝利する。ただし、この暗号文を持っていけ」

パージュは即座に信じ、任務報告として持ち帰った。だがそれは敵が仕掛けた嘘。暗号は存在しない軍の位置を示し、味方は大混乱。

怒り狂った上層部は、タイムマシンを逆利用することにした。

「過去に戻ってやり直せ。今度こそ、騙されるな」

第二の時間‥。

過去に戻ったパージュを出迎えたのはなんと未来の自分。

「心配するな。俺はお前だ。信じろ。このルートを選べば成功する」

パージュは即座に信じた。だがそれも罠。未来の自分もまた、さらに未来の自分に騙されていたのだ。

スパイ活動は芋づる式に失敗を繰り返し、世界線はねじれ、彼の履歴は「失敗の多重奏」となった。

第三の時間‥。

あるとき、ふと気づいた。

このタイムマシン、本当に存在しているのか?

壁は金属に見えるが、指で叩けば空洞の響き。窓に映る景色は映像めいている。

「おや……私はただ机に座らされ、幻を見せられているのではないか?」

そう悟った瞬間、世界がぐにゃりと溶け、また同じ任務開始時に戻った。

最終の時間‥。

何度も騙され、嘲笑され、利用され続けたパージュ。

しかし、敵は決して彼を処刑しなかった。理由は簡単。

「騙されやすい者ほど、疑われにくい」

誰もが彼を愚か者と侮った。だからこそ、彼は敵の中枢にまで平然と立ち入ることができた。

最終局面。敵将の前で彼はこう言った。

「また騙されに来ました」

その一言と共に起爆装置を置き、微笑んだ。

光と影が絡み合う刹那、パージュの運命は無数の時間軸に拡散した。

彼が本当に任務を成功させたのか、それとも永遠に幻影の輪をさまよっているだけなのか‥。

ただ一つだけ確かなのは、彼のだまされやすさこそが、時間を越える最強の武器だったということだ。


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― 新着の感想 ―
騙されるのも、また才能ということなんですね 良い学びになりました
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