停滞アパート4
しばらく廊下で待っていると、大きな籠みたいなやつが何枚もの折り紙で出来た鳥のような物に掴まれて、運ばれてきた。
中には次の人の分の情報が書かれたファイルが入っていた。便利だね、これ。
「ありがとう! すごいねこれ!」
下にいる乃愛に向かって叫ぶと、嬉しかったようでピョンピョンしてる。
その調子で1人ずつ部屋から救出していった。
思ったよりも、みんな簡単に出てきてくれる。これならむしろ高橋さん達の方が難しかったくらい。
もしかして体力を吸われて、部屋から出そうとされた時に抵抗する力が弱まっているのかな。
しばらくすると、被害者は明里ちゃんともう1人だけになった。
「202号室……ここが最後だね。聞こえますかー?」
呼びかけてみるも返事がないなぁ。いや、少しだけ何か聞こえる気がする。
声が遠いから、ドアに耳を当ててみた。
「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさ……」
ドアの向こうの人は永遠にそれを繰り返していて、私はゾッとした。もしかしてヤバい人? まぁ性格がヤバいだけならともかく、話している内容を考えると、今回の事件に関わっているかもしれない。
しばらく耳を澄ませていると、やっと別の事を話し出した。
「僕のせいだ。僕があんなやつと取引しちゃったから……」
それだけ言うと、中の人は泣き始めた。少なくとも悪いやつじゃ無さそうかな。こんなに声が遠く聞こえるという事は、部屋の奥の方にいるのかもと思って、ドアを大きく叩いてみた。
やっと気づいてくれたようで、慌ててこっちに駆け寄って来る音がする。
「まだ巻き込まれていない人がいたんですか!? だめです。このドアを開けたらアイツに気づかれてしまいます。この社員寮はもう普通の状態じゃありません。私は良いですから早く逃げてください」
中から若い男性の声がした。職員さんから受け取った情報の通りだし、多分本人だね。まだ全員無事で安心した。
「落ち着いてください。私達もここが異常な状態にある事は把握しています。だからあなたを助けにきました」
「あなた達はアイツの怖さを知らないんだ! これをインターネットに上がっているような、ちゃちな怪奇現象と一緒にしないでくれ!」
話の通じない人だなぁ。今さら私達がそこをごっちゃにしてる訳ないじゃん。
少しそう思ったけども、もしかしたらこの人は今まで超常存在の事とか知らずに、今回たまたま巻き込まれちゃったと思えばまぁ普通の反応なのかも。
この事件の原因だからって勝手にこっち側の人だと決めつけちゃってごめんね。
武家屋敷の時なんかはパニック状態だった事を考えると、私もだいぶ慣れてきたって事なのかな。
「安心してください。私達は、それでもあなたを助けるためにここにいます」
「……ほ、本当ですか? グスッ、そんな、僕はこんなに迷惑をかけたのに……」
そう言いつつも、やっとドアが開いた。これで色々分かってくるはず。
さっきこの人は「アイツ」と言った。
だとしたら、この超常現象の本体はこの部屋の異常じゃなくて、これを引き起こしている何者かがいるのかも。
そこに高橋さん達を残すのは不安だったから、私達はいつでも逃げられるように、敷地のはじっこで話を聞くことにした。
停滞アパートはあと2話ほど続くと思います。結構長く時間を使ったので、その次はほのぼのよりの話にしようかなぁと思っております。




