朝ごはん食べよ
「おはよぉ。2人とも良く眠れたぁ?」
私達がリビングに行くと明里ちゃんと高橋さんは既に起きていた。寝起きで語尾が伸びちゃうねぇ。
今日はみんな午後から授業だからのんびりしてる。
「そこそこ……かな。ね、ねぇ。あの置き物はなんなん?」
明里ちゃんが指差す先にはスーツを来たトカゲ人間の像が置いてあった。15cmくらいのやつ。
「それはレプティリアン人形だよ。インテリアとして買ったの。可愛いでしょ」
「へーそうなんだ。山本さん。次誰かが家に来た時は、あの暗闇で目がランランと光る機能だけでもオフにした方が良いかも」
「えー。そこが気に入ってるのに」
しぶしぶ付属のサングラスを付けてあげる。これはこれでカッコよくていいね。
って朝ごはん作らなきゃ。
「私も手伝うよ。料理は苦手じゃないし」
「私にもやらせて。たまに自炊してるから安心していいわ」
乃愛ちゃんと高橋さんが、そう申し出てくれた。
「え? 出来へんの私だけ? じゃあ見学役やるわー」
「せめて味見役くらいはしないさいよ。明里は片付け係決定」
どんどん話が進んでいく。
「私がご馳走するって言ったんだし、3人とも座ってるだけでいいよ」
「えー、私は一緒に料理してみたいかな」
「私も如月さんと同じね」
「じ、じゃあ私も同じ気持ちで」
押し切られちゃった。ありがたいなぁ。
「それなら頼らせてもらおうかな。今日の献立は……海老クリーム入り揚げサンドイッチだよ!」
「優香ちゃん、思ったより気合い入ってるねぇ」
まずは熱したフライパンにバターを入れる。溶けたあたりで、高橋さんがみじん切りにしたニンニクとにんじん、薄切りにしたきのこを炒めていく。
ちょっとしたら冷凍海老を入れて、上から黒コショウをかけた。そこまでしたら炒める方は乃愛ちゃんに頼んで、私はソース作りに取り掛かった。
マヨネーズに、これまたみじん切りのパセリとピクルスを入れて良く混ぜる。マヨネーズは気持ち多めに。好きなんだよねぇ。
「こっちは出来たよ!」
「ナイスタイミング」
炒め作業が終わったら、さっきのソースと良く混ぜる。これで中身は完成。
次に溶き卵に漬けた食パンに、フライドチキンパウダーをまぶす。この時に2枚くっつけて揚げなきゃいけないのが注意点。そうすると衣のおかげで、ソース状の具が外に溢れずに済む。
油でカラッカラに揚げたら包丁で真っ二つ。切断面から見ると、上下のパンは衣のおかげでくっついてポケットみたいになっている。
ここにさっきの具入りソースを入れたら、さらにパセリをかけて完成。
「おぉ! 美味そうやん! テンション上がってきた〜」
「いっぱいあるからドンドン食べてね」
10組は作ったからね。1人2つ。高橋さんが4つ。足りるよね?
さっそく一口。うん。サクサクで美味しい。上手く出来たね。
マヨネーズで甘めなソースに、ピクルスの酸味がちょうど良くあっている。
また一口食べるごとに、カリッとした衣ともちっとした食パンが私を楽しませる。プリプリの海老が良いアクセントになってるね。
あっという間に1つ食べ終わっちゃった。
2つ目には七味をかける。味変は神。気づけばお皿には何も残っていなかった。
「そういえば乃愛ちゃん以外にも、こういう超常現象を知ってる人いっぱいいるんでしょ? 秘密に出来てなくない?」
「バレちゃったかぁ。まぁいずれは教えるつもりだったんだけど。実際知識のレベルに差はあれ、知っている人はいっぱいいるわ。彼らは戦前、それどころか平安とかそこらから知ってる訳だからね」
「私の陰陽術とかはそういう伝統的な物の一つだよー。他には伝承として伝わる儀式とかもいっぱいあるかな。お祭りっていう形になったりして、参加者の大半は知らない場合が多いけど」
「如月さんとかは良い例ね。他にも超常物品は、許可が出れば売っても良いって前に伝えたでしょ? 売る先があるって事は超常課以外にも買ってくれる場所があるって事よ。でも彼らの大半はちゃんと管理されているし、協力的な限りは黙認されているのが現状ね」
「お祭りとかを潰す訳にもいかへんし、地方に伝わっている秘術とかはその一族やないと管理しづらい物とかあるしな。ま、超常課より向こうが先輩やししゃーないな」
結構適当なんだなぁ。まぁ何かあったら警察庁とかが取り締まってくれるから良いのかな。
「身近な例だと、私の折り紙も外部から買ってる物だよ。うちの家系で伝わってるのより品質が良いんだよねぇ」
伝統が……。世知辛いなぁ。
「私が結界を作る術式を書くインクも買ってる物よ。そうだ。ちょうど買おうと思ってたし、山本さんも一緒に行ってみない? 今なら授業前に間に合うはずだし」
次回の投稿は火曜日の予定です。土日だけは連続投稿、それ以外は2日ごとにしようかと思います。
いつも呼んでくださってありがとうございます。