試験候補生
学院を見に来たのは言いけれど今日は特にすることも無くただ案内されただけだった。
「各地から生徒を探しにスカウト部隊が戻ってくる期限は明日だから実際の試験は明日なんだよ。」
ヒューバートはそう言いながら今日泊まるのにおすすめの宿屋を教えてくれた。
学園お抱えの宿屋らしくそこには明日の試験を受ける候補生も何人かいるらしい。
とはいえスカウトを受けるレベルになるとそう多くはないらしく毎年5人~10人くらいだと言われている。
10人もいる年は豊作だと言われるくらいとの事だ。
ちなみに今年の候補は8人らしいが全員が全員、スカウトのお眼鏡にかなうかどうかは分からないので良くて半数くらいではないかと思われるらしい。
早速その宿屋に着いて兄弟水入らずで都市についての感想を言い合う。
「都市の真ん中の噴水は綺麗だったね兄さん。」
「噴水もそうだが途中に見えた冒険者の通い場は年季入っててかっこ良かったぜ、ああいうところに親父もいってたんだろうな。」
「父さんは最高でCランクって言ってたし、冒険者としてはCまで行ければ食っていくのに困ることはないって話だもんね。さすが父さんだ。」
「俺としても冒険者になるかは分からないけど通うことになれば目指すはやはりSランクだよな。」
「冒険者でSランクになれば十騎士と同レベルだって言われてるみたいだもんね。誰もが憧れるよね。」
「Sランクは数年に1人って言われてるくらい滅多に現れない存在だからな、どれくらい強いんだろうなそのレベルの人達は」
これからのことに期待を胸ふくらませながらその日はあっさりと眠りにつくこととなった。
寝る途中でそういえばこの宿にスカウトされた人が泊まっているって話を思い出し軽く挨拶でもしようかと迷ったが睡魔には勝てずそのまま寝てしまうノアオであった。
「よく寝たぜ」
「おはよう兄さん…」
「おはようクロノ、今日は張り切って試験を受けに行くぜ」
「兄さんの実力なら余裕だと思うけど…」
寝ぼけ眼を擦りながらクロノは兄の応援をする。
準備をして宿の外で待つ事にするとそこには今日共に試験を受けるであろう人が3人程たっていた。
1人は背が高く綺麗な身なりをしているから貴族だと思う、次に目に付いたのは傷だらけの腕をしていながら腰に双剣をつけている熟練の戦士のような人だった。
最後は背丈は兄さんより少し高いくらいだが腕は太く背につけた大剣が力自慢ということを表していた。
3者共に兄さんより4歳くらい上に見える。
そもそも騎士学院の平均入学年齢は18歳と言われていて若い人は15歳くらいはいるけれどノアオくらい若い人は数十年に1人と言われ、20歳を超えても試験を受ける人がいるくらいだ。
ここではノアオくらいの若さの方が異端なのだ。
スカウトの年齢は高くても18歳までらしく20歳を超えていたらどんなに実力があっても一般の入学試験を受ける必要があるらしい。
一般の入学合格率は1000人受けて良くて50人程度らしく相当な狭き門とのことで騎士学院のレベルの高さを物語っていた。
そんなこんなで迎えが来るまで待とうと2人もその場に立っていたら1番身なりの言い人が声をかけてきた。
「君達2人とも試験を受けるのかい?」
「いや、受けるのは俺だけでこいつは弟なんだが後で野暮用があって一緒に試験の場に向かうって感じだ。」
「そうなのか、お兄さんである君も相当若いのにさらに若い人がスカウトに受かったのかと思ってびっくりしてしまったよ。今年は人数は少ないけど豊作なのかなと思ってね。名乗ってなかったね僕はキール・シュベルトだよ、よろしく」
そうキールは答えた。
シュベルトと言えば古くから王家の騎士として名を馳せている有名な貴族の一門だ。
数年前にはシュベルト家の人が十騎士にも選ばれており代々優秀な騎士を生み出している家系で今年のスカウトにはそんな凄い人が一緒なのかと他の2人は驚きを隠せないようだった。
スカウトを受けて試験をすると言っても全員が受かる訳ではなく毎年半数は試験に落ちて一般試験の方にまわるらしく出来れば優秀試験に合格したい面々は同世代でそんな人がいることは避けたいものであった。
とはいえ、ノアオはキールに関して特に気にしていなかった。普段から魔獣狩りを行っている身からして大体の実力は見れば分かるようになっていたためキールは問題ないと判断していた。
「わざわざありがとな、俺はノアオでこっちが弟のクロノだ。お互いに試験受かるといいな」
そんな会話をしているノアオを見て他の2人はこいつは問題ないと鷹を括っていた。
一応、傷だらけの方がランド、大剣を持っている方がナイアと自己紹介を受けた。