強い人を求めて
「やっぱり1番大事なのはお金ですよね、ここが解決しないと絶対に兄さんは動きませんね。」
クロノは意気込んでヒューバートに告げる。
「それなら問題は無いかと、騎士学院には優秀な生徒に対して費用の免除及び国からの援助が出ることになっているんだ。彼の実力なら優秀生として選ばれること間違いないだろうね。」
ヒューバートは丁寧に答えた。
「であれば次に問題なのは兄さんが思い描くレベルの強い人がいるかどうかですね…うちの父親も強い方なので事足りるようであれば無理して学院には通わないでしょうから」
難しい顔をしながらクロノが次の問題を尋ねる。
「それこそ先程言ったように優秀な生徒がいるんだけど、ノアオ君に見合うレベルで言うと2人に絞られるかな?」
「1人はノアオ君の1つ上で力や速さより技術で認められているエリッツ・クラウス君、彼は学院に入ってメキメキと力をつけて剣の実力だけなら5本の指に入る人だよ。」
「そしてもう1人は力、速さ、技術どれをとっても1級品で冷静に戦うその姿から騎士王子と呼ばれている生徒、アルスター・メリル君だ。彼は学院1位の実力者だよ。」
「他にも優秀な生徒は沢山いるけど剣を使う中でお気に召すのはこの2人だと思うよ。」
まるで自分の家族を紹介するかのように興奮しながらヒューバートは答える。
「ふむふむ、それだけ凄い人がいるなら話を聞くだけでも少なからずのってくれそうです。ちなみに先生側には剣を使う人ですごい人とかいるんですか?」
ノアオを説得するための方法を探りながらクロノが尋ねた。
「先生で凄いのは1人かな、君も知っているだろうけどこの国の騎士の中で特にすごいとされる十騎士にかつて選ばれていたんだけど、後進の育成したいということで今は先生として活動されているんだ。実力もあり人格も素晴らしい先生であり騎士の鑑のような方だよ。」
またまた興奮を抑えられないような口振りでヒューバートが答えた。
十騎士とは国に認められた10人の戦士で剣士や魔法使いなどの職業を問わず選ばれている。
実力はもちろん人格や国への貢献度なども考慮されているが、確実に言えるのは何番目であろうが小さな国なら1人で壊滅できるくらいの実力があるらしいとの事だ。
そんな人がいるのであればノアオも話を聞けば乗ってくれるに違いないとクロノは考えた。
「その話を聞けば兄さんも何とか考えてくれると思うので今日はもう遅いですし、うちに泊まって行ってください。ご飯の後にでも話をしてくれればきっと大丈夫だと思いますし、僕も父も母も説得する流れにしてみせますので。」
小さいながらも任せてくれと言わんばかりのその態度にヒューバートは少し安心した。
これで本当に学院に来てくれなければ何を言われるか分からないし果てはクビにされるかもしれないと悪い想像を消すように頭を振ってクロノの提案に乗る形をとることでその家にお邪魔することとなった。
美味しいご飯をいただいた後は先程クロノが教えてくれたようにお金に問題がないということと、ノアオが気に入るような強いひとがいるという話をしたら多少は気が向いたようで、そのうえでトリノ、ノルン、クロノの説得のかいもあり一度騎士学院の試験を受けてくれることで話がついた。
ヒューバートとしてもノアオが騎士学院でどこまでやれるのかすごく楽しみであった。