模擬戦を控えて 魔族を相手に
――通い場――
「大体こんな感じよ。細かい情景や会話の内容はフレアから聞いた話と私が見ていた中での覚えてる限りだから多少の違いはあるかもしれないけれどね。」
キャンディはカリスとアリスがフレアに挑んで倒されてしまったけれどもすぐに戦えないように負傷させることが出来たと話す。
「全部…本当なんだな?」
ノアオは声を出せずにいる中で振り絞って微かな声でキャンディに確認する。
「もちろんよ、こんなこと嘘ついても何も意味ないじゃない。全部本当に起こったことよ。」
キャンディはふざける様子もなく真剣に語る。
「昨日の感じは少し怪しいと思ってましたけど特訓が終わるまでは何もしないと思ってました。それが甘かったんですね…」
クロノはこうなる可能性を考えていたが動いても今日の特訓が終わってからか、明日になってからだと思っていたので考えが浅はかだったことを後悔する。
「私としては伝えることは伝えたわ。ここから先は貴方達が何をするのか選んでね。」
今この場にいる体から引き離したような瞳でノアオとクロノのことを見つめるキャンディ。
「俺としては今すぐにやりたいところだけどそんことしても何にもならない事はわかっている。こんなこと言っても仕方ないかもだけどキャンディ…お前はそんな馬鹿なことをやめて幸せに生きるんだぞ。」
ノアオはキャンディの話を信じた上でカリス達が残していったことが何かないか確認しながら キャンディには生きて欲しいと話す。
「そっか、そう思ってくれるのは嬉しいけどやはり私は魔族でお前たちは人間だ。ここにはどうあっても越えられない種族の差があることを忘れずにね。それじゃまた。」
キャンディは何を言われても人間と魔族は違うものだと話してその場を去っていく。
「兄さん、僕たちに今出来るとこは何も無いよね。もっと早くわかっていれば止められることも出来たもしれないのに。」
去っていくキャンディの背中を見ながらクロノは何もできることはなかったと話をする。
「そうだな、止められたくないから話をして行かなかったんだな。せっかく人間と魔族が一緒に手を取りあって戦える時が来たと思ったんだがな。これって簡単なようで難しいんだな。」
ノアオはストラ達の時にできなかったことがアリス達相手に出来たと考えていたので魔族と一緒に戦う未来を作るのは簡単な話じゃないんだなとしみじみ感じる。
「次の機会があればいいんですけど、それでもカリスさん達が居なくなったのは悲しいです。」
クロノはほかの魔族相手に協力体制が取れることを夢見ながらもカリス達を思って悲しい顔をしていた。




