囮作戦
「いきなり声をかけてくるから誰かと思えば場長ですか。」
「びっくりするじゃない、もう。」
ストラとメルバはカナメに驚きを隠せないでいる。
「悪かったな、しかし怪しいやつを放っておく訳には行かないな、そいつがダンジョンに何かしてる可能性高いんだろうし通い場としてもやれることは手伝うぞ。」
カナメは胸を叩きながら協力してくれる話をする。
「僕たちだけで不安なのは確かでしょうしカナメさんも来てくれるなら万全の体制と言えるのでは無いでしょうか?」
「そうそう、このまま手をこまねいてる訳にもいかないっすからここでこっちからやらないと。」
クロノは冷静にノアオは勢いよくカナメの協力に賛成する。
「そうね、場長が一緒なら何とかなるかしら。このままじゃどうにもならないのも確かだし。ストラ、彼らを信じてみましょう。」
「ふぅ、仕方ない。とりあえず無茶はしないようにな。」
メルバとストラはクロノとノアオの頭を撫でながら賛成してくれた。
「それじゃ早速準備に取り掛かるか。」
カナメの言葉を皮切りに全員が動き始めた。
「なかなか姿が見えませんね。」
あれからすぐにメルバとストラに動いてもらい街中の人気のない所へちらほら移動してもらっていた。
しかし、警戒されているのかお目当ての人物の姿はクロノ達3人からは見えていなかった。
「そんな簡単に見つかるようなやつじゃないんだろうし、時間かけて挑むしかないだろうな。」
カナメは気長に付き合ってくれるようだ。
「まずは2人を見失わないようにしねえと、しっかり見てろよクロノ。」
「わかってるよ、兄さん…」
ノアオへの返答の途中でクロノが皆に静かにするように合図をする。
クロノが指を指す方をよく見ると黒いローブに包まれた怪しい人物が映っていた。
「(あれが言ってた怪しいやつか?)」
「(そうですね、まだ周囲を警戒しているみたいですけどこの後メルバさんとストラさんはまた人通りの少ないところに移動します。)」
「(その瞬間に隙があれば全力で捕まえるってことだな。)」
3人が小声でこの後の流れについて確認する。
その後メルバとストラが路地に入った時怪しい人物の警戒が一瞬緩んだのを確認して一気に詰め寄る3人。
「はっ!」
「気づいた時にはもう遅いぜ!」
「貴方が何者か白状してもらいますよ。」
「よくもうちの冒険者を襲ってくれたな!」
黒いローブの男が3人に気がついた時にはもう既に十分な間合いに近づいて攻撃体制に入っていた。
「ちっ!」
「待て!」
「逃がしません!」
「まちやが…うおっ!」
黒いローブの男が焦りながら影に身を包むとその姿が見えなくなっていた。
クロノとノアオはその影にギリギリ入り込んで一緒に消えていったが、カナメはなにかにつまづいてしまったようで置いていかれていた。




