村1番の天才
ノアオが密かにクロノから教わった魔力を使った身体強化の力を使うことで9歳にはもうトリノに負けず劣らずの剣技を見せるようになった。
力ではさすがに勝てない分小ささを生かした動きから繰り出される剣技にトリノは苦戦を強いられる。
最初に負けた時にはさすがに手加減をしていたのだがいつの間にか手加減せずとも互角に近い勝負をするようになっていた。
トリノもさすがに全盛期の強さを持っているとは言わないがそれでも村の人間では圧倒的に強い大人である。
そのトリノ相手に互角の戦いができるノアオの才能は誰もがこの村で腐らせるには惜しいと思う程だった。
それだけの力があるのだからトリノと一緒と共に仕事をするようになったのは当然のことだった。
トリノは元冒険者の経験を活かして周辺に現れる野獣の狩りを生業としていた。
その村の周辺はそれほど強い野獣が出ることも無く基本的にはトリノ1人で何とかなるほどであったが、ノアオと共に狩るようになってからはかなり余裕ができたのか傷ついて帰ってくることが少なくなっていた。
トリノの経験をそばで感じられるノアオはこれ以上ないくらい成長を見せることとなった。
そんな兄とは違い平々凡々と過ごすクロノは母親が育てている農業の手伝いを行っていた。
ノルンはクロノに水属性の魔法の才能があることを知り、植物を育てる水やりを任せている。
普通の水をまくより魔法の水の方が植物の成長には効果的とのことでしっかり水やりを行うようになった。
農業が終わればあとは特にすることもないので友達と遊んだりもしているのだが、一日のうち数時間は村の人から気づかれないように魔力制御のトレーニングを行っている。
この時のクロノの魔力は三大元素を使えるトップクラスの魔法使いとほぼ同等であるのだが、本人はそんなこと理解していないため毎日魔力向上および制御のトレーニングを欠かさず行うようにしていた。
しかし、その魔力の多さは制御がしっかりしているため村の人間には気づかれることなくクロノは天才の兄を持つ普通の弟と村の人からは思われていた。
ノアオのみ幼い頃にクロノから身体強化の魔法を教わっていたため制御で隠された魔力に気がついていた。
そんな天才であるノアオの元に国の戦士育成機関であるストライプ騎士学院の先生がスカウトをしようと村に訪れていた。
ノアオが12歳、クロノが9歳の時だった。