模擬戦参加のために トラビスの特訓
トラビスはアルナに負けたことを相当気にしていた。
実際に実力差があるのはトラビス自身もわかっているので本来ならそこまで気にするものではないのだが自分の戦略は問題なく自分の魔法の発動の遅さに時間を取られて負けるきっかけを作ってしまったことが悔しかった。
もし自分の魔法の発動が早めにできて上手くハマっていればそのまま勝てたかもしれないと考えた時に基礎の鍛錬が出来ていないと理解してすぐにクロノの元へ訪ねる。
「すまない、クロノはいるかな?」
部屋の扉をノックしながら鍵がかかっていないのを確認して中に入る。
「トラビスさん、どうかしましたか?」
部屋にはクロノだけで相部屋のパラは出掛けているようだった。
「お願いがあるんだ、時間が無いのはわかっているがそれでもできる限りの事はしたくてな。今すぐにできる基礎訓練法を教えてくれないか?」
トラビスは自分に足りないのは戦略を活かすだけの魔法の変換力等を含む基礎力だと考えてクロノに教えを乞う。
「そうですね、戦いの日まで時間はありませんからやれるとしたらこれくらいですかね。」
クロノは机のそばにかけてある杖をトラビスに渡す。
「この杖は?」
見た目は特に何も無い杖を渡されて不思議に思うトラビス。
「そうですね、いつもの感覚で本当に小さな魔法を打ってみて貰えませんか。」
クロノはトラビスに渡した杖を使って魔法を打って欲しいと伝える。
「ここでか?本当に小さな魔法から大丈夫だと思うが…極小の魔法を…」
トラビスは部屋が傷つかないように小さい魔法を放とうと魔力を込めるが全く魔法が放たれる様子がなかった。
「これは一体?この杖のせいなのか?」
トラビスは自分が全く魔法を放てなかった事に疑問に思いながらも杖が関係しているのだと想定する。
「そうです、その杖は魔法変換がとんでもない事になってる杖で持っていない方がよっぽど魔法が放てる杖になってます。それによって必要な魔力が莫大になりつつ変換も効率よくやらないといけません。僕は変換には自信があったので魔力量の強化が主な使い方でしたけどトラビスさんなら変換効率も魔力量もかなり上げないと使えないはずです。時間はそんなにないので使いこなせるまでにはいかないと思いますけど強化には繋がるはずです。」
クロノは以前にカリス戦の時の強化用に使っていた杖をトラビスに渡して杖の効果を説明する。
「なるほど、これはたしかに特訓にいいものだな。貸してくれてありがとう。」
その杖を持って早速試しに行くようでクロノに感謝をして勢いよく部屋から出ていくトラビス。
「頑張って下さいね。」
出ていった後小さく呟くように応援の言葉をかけるクロノだった。




