魔族の残り 魔物の群れとピンチ
「これは所謂ピンチと言うやつですかね?」
ボロボロの体にムチを打って魔物が迫ってくるのに備えるキール。
「そんな余裕な台詞が出るならここは任せたいくらいだが厳しいよな。」
見える数だけでもかなりの魔物がいるのでどう対処すべきか悩むネクロ。
2人とも現実逃避しているのか軽口を叩き合う。
段々と迫ってくる魔物に悩んでいるとすぐそばの木の上から声が聞こえてきた。
「こんなところで会うなんて奇遇ですね、よっと。同じ十騎士としてここにいたことは内緒にしてくださいね。」
急に上から声がして驚く2人は見上げると誰かが木の上から降りて来た。
それは本来ならこんな所にいるはずのない青年だった。
「クラム兄さん。またサボっていたのかい?」
キールはその青年を兄さんと呼びよく知った感じだった。
「あれ?ネクロさんと一緒にいるのはキールだったのか。少し見ないうちに強くなったみたいだな。兄さんは嬉しいぞ。」
クラムと呼ばれた男性は顔つきはキールとよく似ているものの雰囲気は似ておらず言うなれば豪快と言う印象を受ける。
その背に背負ってのはかなりの大きさの剣で見た目の細腕では到底振れそうには見えなかった。
「クラム、ちょうど良かった。サボってた事は見逃してやるからここは手伝え。お前の力があれば余裕だ。」
ネクロは顔には出さないが助かったと思いクラムに協力を申し出る。
「弟と先輩から頼まれたら手伝わない訳には行かないな。これが終わったら約束通り内緒にしておいてくださいね。」
クラムは巨大な剣を持ち悠々と振り回す。
「私は戦力にはならないと思いますけど私の力で防御面は気にしなくても大丈夫です。長期戦になるとこちらが不利ですのでネクロさんとクラム兄さんに攻めはお願いします。」
キールは自分がアートとの戦いでまともに戦える力が残っていないと判断し自分の持つスキルで2人をサポートすると言う。
「それは助かるな。さっさと終わらせるぞクラム!」
ネクロはナイフを構えて迫り来る魔物に体勢を整える。
「我が弟がこんなに頼もしくなるとは。キールの年の学院はレベルが高いと聞いていたが成長著しい姿に兄とし涙が出そうだ!」
クラムは感嘆の言葉を述べながら巨大剣を構える。
そんな3人に向かって魔物の群れが一気に迫ってきた。
「先ずは一発貰いますよ!」
クラムは回転斬りの要領で周囲に迫った魔物を一気に真っ二つにしてみせる。
ネクロは巻き込まれないようにキールと共に影に潜ってクラムの剣を躱す。
キールは何度かクラムの戦っている姿を見たことあるが変わらず豪快なその姿に背中が遠く見えた。