勝負の時 ノアオとアリスの決戦①
「よし、清々しい朝だな。」
ノアオは勢いよく目が覚めてベッドから飛び上がる。
既にテスタは何かしているようでベットにはいなかった。
ノアオは新しい剣を持ってアリスに指定された渓谷へ1人向かう。
行く途中に何匹か野生の魔獣に遭遇するもノアオから発せられる殺気に当てられたのか魔獣がノアオに近づいて来ることはなかった。
「思ったより早かったですね。もう少しお別れのときを味わっていると思っていましたよ。」
アリスは何故かノアオに背を向けて会話をする。
「それは必要ないさ。俺が勝って皆の元に帰るんだから。」
ノアオはアリスが背を向けていることを不思議に思いながらも強気の返答をする。
「ふふっ、笑ってはいけませんね。これは失礼しました。本気で貴方は私に勝てると思ってこの場に来たんでしょうからその覚悟を笑うのは失礼ですね。」
変わらず背を向けたまま余裕の態度を見せるアリス。
「…なんで後ろを向いたまま話してるんだ?」
ノアオはあまりに気になってしまい背を向けている理由をアリスに確認する。
「後ろを向いている理由ですか…すみません、この戦いが自分で思っている以上に楽しみになっているみたいで気持ちの昂りが抑えられないんですよね。なので貴方の方を向いたらあまりの殺気に貴方が意気消沈してしまわないか心配で後ろを向いてます。」
ありすは以前に殺気を向けた時の事を思い出してあまりに強い殺気を当てたら逃げ帰ってしまうのではないかと心配していると言う。
「生意気な事を言うけどさ、俺より弱いやつが放つ殺気を浴びて逃げる訳ないだろ?」
ノアオはアリスに対して強気な態度を崩さずに言葉を返す。
「そこまで言えるのなら大丈夫でしょうね、それでは…」
アリスはノアオの方を向いて見せる。
ノアオはアリスに驚愕する。
殺気に当てられた訳ではなくあまりにも笑顔を見せていたその姿が不気味に思えてしまう。
「なるほど、私が想定してる以上に強くなったみたいですね。あぁ、私はワクワクが止まりません!今この場でこんなに強い人間とやり合えるなんて興奮が収まらないです。」
アリスはあまりに邪悪な笑みを浮かべて興奮を抑えられずにいた。
「カリスの方がやばいと思ったけど本質はアリスの方がやばいって訳だな。」
内に潜む狂気に困惑するもこんな奴を放っておく訳には行かないと気合いを入れ直すノアオ。
「本当は貴方のいた学院に別の魔族を向かわせていてその話をした時の貴方の驚愕した顔なんて見たかったんですけどそんな事どうでも良くなりました。あぁ、抑えきれません。始めましょう!」
アリスはいきなり刀を鞘から抜いてノアオに切りつけて来る。
「キールさん、学院はお願いしますね。」
独り言のように呟き剣を鞘から抜いて剣を打ち合うノアオ。
その一撃にお互いの実力を感じ取り一旦距離を置く2人。
静かな時が流れ渓谷の上部から小石が落ちて地面に当たる音がした瞬間、2人はもう一度攻め合いを始めるのだった。




