勝負の時 クロノとカリスの決戦①
朝起きたクロノは事前に聞いていた場所へ1人で向かう。
部屋を出ると修了式が行われるために誰もがバタバタ動き回っていた。
この風景を壊す訳にはいかないと心に秘めて1人で学院から離れた洞窟へ向かう。
あまりに暗い洞窟だったが1本道であり進んで行くにつれて明るくなって来ていた。
「やあ、友達にお別れの挨拶はすませましたか?もう会えないのですから。」
カリスは洞窟の奥で椅子に座ってクロノが来るのを待っていた。
「いえ、嘘をついて来ちゃいました。学院で戦うって言っておいたんです。もしかしたら僕のフォローに駆けつけるかもと思ったので。だから嘘つきのままで終わる訳には行かないのでもう会えないなんてことはありません。カリス、貴方をここで倒して見せます。」
クロノは杖をカリスに向けて戦闘態勢に入る。
「そう焦らなくてもいいと思うがね。君の読み通り学院に私の部下とも呼べる存在を向かわせたから君がここに来る前にはもう既に戦いは始まっているんじゃないかな?」
カリスは不敵な笑みを浮かべ学院を攻めている事を伝える。
「大丈夫です、それを予期して嘘ついて学院に行ってくれてるはずですから。その人は僕の大切な人で兄さんの次に魔族を任せられる人です。」
クロノはそこまで予測してアルナに嘘をついていたという。
「なんだ、それは残念だ。もう少し君の焦る顔が見たかったのだけれどつまらないね。」
カリスはあてが外れてつまらなさそうにしている。
「このまま攻撃して終わらせてもいいですか?」
あまりにやる気の無い態度に言いながら魔法を放つクロノ。
クロノが放つ水の玉は以前より明らかに数も大きさも飛ぶ速さも上がっているがそれに対してカリスは指をパチンと鳴らすだけで大きな竜巻を作り水の玉を全てかき消して見せる。
「去年戦った時より確実に強くなっていますね。もしかしたらあっさり終わってしまうと危惧していましたがそんな事はなさそうで良かったです。しっかり準備を整えて来たので楽しませてくださいね。」
カリスは少し気合いを入れたようで椅子から立ち上がり、またもや指を鳴らすと座っていた椅子が壊れる。
「ちなみにここの洞窟は簡単に崩落とかしないですか?僕と貴方が本気で戦えば壊れてしまう気がするんですけど?」
お互いに全然本気を見せていない事を理解した上で戦う場として大丈夫なのかカリスに確認するクロノ。
「大丈夫ですよ。ここの壁は特殊な魔法石が混ざっていまして壁に魔法が当たる前に魔力が吸収されるようになってます。こんな風にね。」
カリスは壁に向かって指を鳴らし黒い風を生み出して壁に当てるが当たった傍から黒い風は消えていった。
「なるほど、それなら大丈夫そうですね。それなら出し惜しみはなしでいかせて貰いますね。」
クロノは改めて杖を構えて本気でカリスを相手する覚悟を決めてみせる。
そんなクロノを見てまだ余裕の態度を見せていたカリスだった。




