クロノの実力
「残り少ない魔力でここまでやるなんて、本当に見くびっていました。すみませんでした。敬意を表して僕の見せてないものを見せてあげますね。ファイア・ウォーターストーム」
突然火と水の属性を口にしたかと思うとその場にアルナが放ったものより強い威力の火と水の暴風が出現した。
「はぁ…さすがにそれは想定外すぎるわよ。それでもこのまま負ける訳にはいかない。残りの私の魔力を全部込めてこの一撃だけでも勝ってみせる。」
諦めの言葉を口にしながらも行動は勝つために全力を出している。僅かに残った魔力も全部つぎ込みアルナの暴風は威力を増した。このままの威力なら負けないとそう自分を信じて。
「アルナさん、貴方は本当に素晴らしい魔法使いです。自分で言うのもなんですが相手が僕でなければ負けることは無かったでしょう。」
そう言うクロノの暴風はアルナの威力の前に掻き消されそうになっている。このままアルナの暴風が勝ったかと思った時。
「そんな方だからこそ、この魔法を見せますね。
火、水、風、土の全てが合わさった4属性魔法。クアトロストーム」
その場にいる誰もが目の前に起きている事の理解ができていなかった。レオン、カウフ、ソマリの3人さえ滅多にお目にかかることのない4属性魔法だ。3人の知っている中でも学園長しか知らずそれも長年の魔法の修行の成果によるものだ。それがまだまだ幼い少年がさも当然かのように使っている。その事実に誰も口を開けなかった。
「久々に見たな4属性魔法、ってことはあのアルナとか言うやつかなり出来るやつなんだな。」
ノアオは4属性を放つクロノではなくそれを打たせたアルナに関心している。
「騎士学園の私でも4属性がどれだけのレベルなのかはさすがにわかるよ。君達兄弟は一体どうなっているんだか。」
呆れたような諦めたような表情を浮かべるヒューバート。
「ヒューバートさんもあんまり信じてなかったと思うっすけど、これみたら俺がクロノを超えたいって思うのはおかしくないっすよね。」
「そうだね、この場面を見たら誰でも信じるだろうね。」
クロノの強さにワクワクしているノアオと結局諦めて全てを受け入れることにしたヒューバート。
(素晴らしい才能です)
カウフは試験官としてより魔法使いとして目の前の状況に興奮していた。この生徒が学院に入れば魔法使いのレベルの底上げになると確信しこれからのことに胸を膨らませる。
アルナは夢でも見ているかのように目の前のことを理解できていなかった。それでもすぐに魔力が切れるまでの全力を自分の作り出した暴風に注ぎ込んだ。




