魔法の天才
「そろそろ終わりにしますか?」
「冗談はよしてよ、こんなに面白い戦いあっさりと終わらせるわけないじゃない。」
余裕を見せるクロノと対比して限界が近づいているアルナは強がって見せた。
「ここまで実力差があるなんて彼の魔力はどれくらいなのか想像つかないな。」
「あぁ、下手したら俺らよりも多いかもしれねえな。魔法玉も詠唱もなしであれだけの魔法が放てるのは変換が優秀なのももちろんだがそれ以上に魔力量が大幅にないと無理だろうからな。」
「とはいえ、私が連れてきたアルナ君もかなり高レベルであることには違いないのだけれど。」
「そりゃ見てたらわかる、それでもクロノのやつは圧倒できるレベルの強さだ、ありゃバケモンだぜ、いい意味でな。」
ソマリとレオンは2人のレベルの高さに関心する。アルナのレベルでさえここ近年ではかなりの高レベルとされる程の魔法使いではある。年によっては2つの属性が使えても魔力が低い、魔力が高くても1つの属性しか使えない、場合によっては魔力も低く1属性しか使えない優秀試験生などがいるほどなのだ。ソマリとしてもアルナ程の生徒を見つけてきたことに関して自信を持って誇ってもいいくらいのだ。それだけの生徒が薄くなってしまう程の存在であるクロノと同じ試験を受けることは彼女にとって幸か不幸か。
「では、いきますね。ウィンド・クレイアロー」
ここでさも当然かのようにクロノは2属性を混ぜた魔法矢をアルナに向けて放ってきた。
「火よ、壁となりて私を守れ ファイアウォール!」
時間が惜しいのか詠唱を短くして火の壁を全面に繰り出すアルナ。内心は驚きを隠せないが防ぐ手立てがないとこのまま負けると思ったのか咄嗟の判断としては正解だった。それでも2属性混ざった矢は防ぎきれず何とか直撃を避けるために方向を変えるだけで精一杯だった。
「今ので終わると思ってました、想像以上です。」
「はぁはぁ、見くびらないでよね。まだ戦えるわよ。」
アルナが防いだのを驚くクロノと限界ギリギリながらも強がってみせるアルナ、どう足掻いてもアルナに勝ち目はないであろうに魔法使いとしてのプライドが素直に負けを認められない。
「それに今のでわかったわよ。こう見えても私って分析派なの。今の2属性混じりあった魔法で貴方に打ち勝って見せる。火よ、水よ、互いに混じり合い相手を穿つ竜巻となれ ファイア・ウォーターストーム!」
残された魔力は少ない中で見よう見まねで2属性魔法を打てるアルナは確実に天才だった。目の前の少年が現れるまでは。




