王城にて 第2王子
「いきなり何を言い出すかと思えば既に馬車が待機しているとは。」
王城へ向かう馬車の中でノアオは呟く。
「そう言われても僕も目が覚めて少ししたら場長が来て王子様がお会いしたいということだから兄さんが目が覚めたら一緒に行ってくれなって急に言われたんだから。兄さんが起きるのが遅かったから少し心構えはできたけど。」
いきなりのお誘いに驚きはしたものの少し余裕のあるクロノ。
「2人は良いわよ。私は今回に関しては通い場で待ってただけで特に細かいこととか知らないのに場長から2人の保護者みたいな物なんて言われて同行させられてるんだから。ただの受付が王子様に会う機会なんて滅多にないからずっと胃が痛いわ。」
カナメに良いように言われてクロノとノアオに同行することになったミアナは不安そうな顔をして馬車に揺られている。
「そうは言ってもどうにもならないですから諦めましょう、ミアナさん。もうお城も目の前ですし。」
2人より余裕のあるクロノはミアナを慰めて目の前に広がるお城を馬車の窓から覗いてみる。
さすがに王が住むところとあってその大きさはとても言葉で言い表せない程で警備兵もあちこちにいてしっかりとした体制が見て取れた。
馬車はそのまま城の入口まで進み停車する。
ここからは歩きということで王子様に使える執事が部屋まで案内してくれるらしく3人は後をついて行く。
王城内は外から見た通りに広いため部屋にたどり着くまでに結構な時間歩く事となり緊張していたミアナは疲れて足がもつれてしまう。
「ミアナさん!大丈夫ですか?すみませんがこの方をどこかの部屋で休ませてあげて欲しいのですけど。」
クロノは倒れそうになったミアナを抱えて執事に休める部屋は無いかたずねる。
「その方をこちらへ。」
執事がどこかへ案内しようとした時にそばの部屋から声が聞こえて来たためクロノはミアナに肩を貸してその部屋へと入っていく。
ノアオと執事もその後に続いて部屋へ入室する。
そこには先程の声の主である金髪の整った顔立ちをした男性がいた。
「呼んだのはこちらなのに随分歩かせてしまってすまないね。どうぞ座ってくれたまえ。」
その男性は謝罪をして全員に座るように促す。
「こちらの方が皆様に本日ご挨拶をしたいと仰っておりました、この国の第2王子であるアクト様です。」
執事は3人に王子の紹介をする。
「通い場からわざわざ来ていただいてありがとう、ご紹介の通り私が第2王子のアクトだ。よろしく。」王族らしい立ち振る舞いでありながらどこか距離を感じさせない王子に初対面ながら心を許してしまいそうになるノアオとクロノだった。