王城にて 通い場での目覚め
「う…うぅん、ここは…って前にもこんなことあったような気が」
クロノが手を覚ますと見覚えのある部屋だった。
「今回は眠っている中で一番起きるのが早かったわね。」
クロノが目を覚ましたことに気がついたミアナが声をかけてくる。
「ミアナさん、ここは通い場ですか。兄さんとアルナさんとキールさんが寝てるってことは連れて帰ってくれたのはネクロさんですか。ありがとうございます。」
ミアナに場所を確認してどうやって戻ってきたのかの確認のために辺りを見回すとネクロの姿が見えないことからネクロが連れて帰ってくれたことを理解したクロノ。
「あの魔族を追い返せたのはお前の力があってこそだし仮にも十騎士が付き添ってるんだから最後まで面倒を見るのは当然だ。」
ベッドの影から出てきたネクロはクロノに返事をしたかと思えばすぐに影に帰って行った。
「まだ疲れてるだろうからしっかり休んでね。
クロノ君達の方はネクロさんから、ノアオ君達の方はテスタ君から話を聞いてるから大体の状況は掴んでいるわ。急がなくていいからしっかり休んで余裕が出来たらクロノ君も話を聞かせてね。」
ミアナは激戦だったクロノ達を労わってよく休むように声をかける。
その声を聞いてもう一度眠りにつくクロノだった。
「よく寝た…しっかり休んで体もちゃんと動くし大丈夫そうだ。」
ノアオは勢いよくベッドから起き上がるとすぐに自分の体の調子を確認して問題ないことを把握した。
「そりゃ丸1日寝てたら元気にもなるよね。」
目の前にいたクロノがノアオに対して声をかけてくる。
「クロノがこうして居るってことはあのアリスって言う魔族相手に何とかなったんだな。」
クロノの元気な姿を確認して魔族との戦いについてたずねるノアオ。
「かなりギリギリだったし最終的には逃がしちゃったけどね。それでも勝ったと言っていい戦いはできたよ。兄さんの方こそアルナさんとテスタさんに聞いたけど結構やばかったけど何とか退けたみたいだね。」
今回の戦いを思い出して語るクロノはボロボロの体をしていたノアオも大変な戦いだったことを聞いてみる。
「実際のところテスタがいなければ俺たちは負けてた、俺はまだまだ弱いよ。」
自分の手のひらを見つめ力の無さを感じるノアオ。
「僕の方もネクロさんがいなければやられてた訳だし僕もまだまだだよ。もっともっと強くなろう。」
自分の弱さを感じたクロノも強くなることを決意する。
「それはそうと兄さんも目が覚めて元気いっぱいみたいだし、ちょっと着替えたら行こう。」
クロノは立ち上がりノアオをどこかに連れていこうとする。
「どこに行くんだ?」
素直に質問するノアオ。
「この国の王子様のところだよ。」
まるで普通のことかのように答えるクロノだった。