王城にて 結末と怪しい存在
黒い玉が地面にぶつかるかと思った瞬間に長い鞭が黒い玉を包み、割れることなく鞭の持ち主の手元へ収まる。
「私がいるこの場でそんな勝手な事をさせるわけが無いだろう。王を守るのが十騎士の務めなのだから。」
鞭を持った綺麗な顔立ちをしたその男性は反逆者達に言い放つ。
どうやら彼も十騎士の1人のようだ。
「オルガ!貴様がこの場にいるとは!どこまでも私達の邪魔をするのだな。」
レム家の長男はその十騎士の人に向かって知り合いであるかのように憎々しい表情を向けて言い放つ。
「君達と学院で過ごした記憶はつい先日のようだよ。君達がこんなことをするなんて思わなかったけどね。私は十騎士で君達は反逆者…圧倒的な立場の差が生まれてしまったね。」
かつての級友を相手に悲しそうな顔を浮かべるオルガ。
「兄さん!もう諦めるんだ。いくら抵抗しても何も変わらないよ。」
パラは諦めずに兵士たちに抵抗を続ける兄に諦めろと声をかける。
「お前が裏切らなければ…お前の情報収集のおかげだろう。お前なら賛同してくれると思っていたのだがな。」
パラの声に一瞬怯んだ隙に兵士に取り押さえられたバラの兄は悲しそうにパラに言い放つ。
「兄さん、どんな事があっても一般人に被害を及ぼすことはダメだよ…」
手元に残った資料を見せながら声をかけるパラ。
その資料には町外れに住む市民が何人か行方不明となっていたのだが実は魔族の実験に使われていたことが分かる資料だった。
「国を変えるには多少の犠牲は必要なのだ!」
レム家の長男が声高に叫ぶ。
「バカ息子よ、国に不満があるとしても市民は国の宝なのだ。その宝に手を出した事は何があっても許される事では無い。地獄でその事を心に留めて置くのだ。」
メタンは息子に市民の大切さを語る。
反逆者の一行は抵抗を諦め全員地下牢へと移送されていく。
その中には魔法学院でふてぶてしい態度をとっていたメルボルンの姿もあった。
「このような事をして許されると思うな!」
地下牢へと移送されたメルボルンは黒い力についての尋問があるということで他の人とは別の所に案内されていた。
「はーあ、こんな事になるだろうとは思っていたけどあの場で出たらあの十騎士にやられていたかもしれないし、ここいらで出ていくのがいい所かな。」
「な、なんだ体の中から声が…ぶはっ!」
メルボルンの体から声が聞こえたかと思ったらその声に反応したメルボルンは急に倒れ込み体が裂かれてしまう。
裂かれた体から何か黒い存在が出てきたかと思えば黒い粒子状になり消えていった。
これにて今回の魔族侵入及び貴族の国家反逆は一段落着いた形となった。