全力の決着
「そうだね、今の話を聞く限り力や速さや技がほぼ互角なら勝負の決めては体力ってことだね。つまりこのままいくとノアオ君はスタミナ切れで負けちゃうってことだもんね。」
戦況を冷静に分析してヒューバートが答えを出す。
「はい、このままでは確実に兄さんは負けます。だからこそ本当は先程の双背撃でダメージを入れておきたかったんでしょう。躱されるとは思いもよらなかったと思いますが。このままでは決定的な攻めてがなく終わります。なので勝負は一閃 第3撃ですね。」
兄を応援する気持ちが強く握りこぶしに力が入っているクロノ。
「ふむ、彼の持ち技はもう1つあるんですね。」
2人の話を聞いていたカルナが声をかけてくる。
「はい、決定的なダメージを受けないために神経すり減らしてギリギリの勝負をしているのでもう体力は限界でしょうからもうすぐ出てくるかと思います。
」
カルナの言葉にクロノは気持ちを落ち着かせて答える。
ほぼ互角の攻防を見せているノアオとアルスターだが、クロノの見立て通り体力の限界が近づいてきているのか、段々とアルスターの攻撃がかするようになってきていた。
ノアオ自身、力も速さも確実に落ちてきていることは理解していた。
「もう限界っすね、本当はもっと続けたかったっすけどこれで終わりにさせてもらうんで。」
肩で息をしながら一旦距離をとったノアオは両手を顔の横に持ってきて剣先を相手に向ける構えを取る。
「それは残念だ、では僕も全力の技でお相手させてもらうよ。」
ノアオの構えに対抗するように左手は前に突き出し、右手を顔の後ろへ剣先を相手に向ける構えを見せるアルスター。
「この構えってことはお互いの一撃は突きだね。」
ヒューバートは2人の構えから一瞬も目を離さないように呟く。
「兄さんもですけどアルスターさんもあの様子では繰り出そうとしている技に自信を持っているみたいですね。」
クロノも2人の勝負から目を話さずに同じく呟く。
構えあって10秒ほどたった時、お互いに呟く。
「一閃 第3撃 閃光撃」
「荘厳の鋭利」
ノアオは全力で相手に突っ込んでいきその構えのまま間合いに入る。
アルスターも同じく全力で踏み込み間合いを測る。
お互いの間合いに入った瞬間、同時に突きを繰り出し合う。
2人が狙い合うのは木剣の先端同士で速さと力で木剣を弾き相手に突きさせた方の勝ちだとどちらも理解をしている。
2つの木剣の突きが重なった瞬間大きな音が会場に響いた。
突きの交わしあいが終わり交差しあった2人の背後にはバラバラになった木剣の屑が残り、2人が手にしている木剣は刃の部分がどちらも折れていた。