ノアオの強み
「兄さんの強みの1つは体の反応速度です。早い話が先程の技が躱された瞬間の回避行動の速さを見たと思いますけどその瞬時の動きがとてつもなく早いです。双背撃の全力の右手の攻撃から左手の攻撃に移れるのも反応速度のなせる技です。」
クロノはなるべく分かりやすく皆に伝える。
「普通の人なら全力で攻めているのに相手の反応を見て瞬時に切り替えることはあの攻撃の速さでは無理です。それこそ最初からフェイントという事で攻めているのであればできるでしょうけど。それを可能にしているのは兄さんの反応速度がなせる技です。」
「成程、普通では考えられない動きを可能にしているのは彼の才能によるものなんだね。」
クロノの言葉にヒューバートが頷きながら納得してみせる。
「それでもう1つの強みというのはなんなのかな?」
ヒューバートはクロノに尋ねた。
「それはこの中で気づいているのはアルスターさんだけみたいですけど、兄さんは身体強化まほうを使っています。」
クロノの言葉に周りの人は驚いた。
「ノアオ君は魔法も使えるのかい!?」
ヒューバートは動揺しながらも聞き返す。
「兄さんはそんなに言うほど魔法を使える訳では無いです。魔力なんてほとんどないので魔法使いとしてはかなり弱いです。それでも身体強化の魔法に関しては兄さんだからこそかなり使える魔法になっています。」
「ノアオ君だからこそ…?」
クロノの言葉に理解できないといった表情を見せるヒューバートだった。
「身体強化魔法というのはその名の通り人の身体能力をあげるものなんですけど、これはずっと使い続けないとすぐに効果がなくなるもので魔力消費も激しくとても効率の悪い魔法なんです。普通の魔法使いならもっと魔力消費が少なく、もっと強い攻撃と防御の魔法を使います。それくらい使われることのまず無い魔法なんですけど、兄さんはその反応速度の高さから必要な箇所を瞬間だけ強化しています。使い続けなければ魔力消費も抑えられて、必要な箇所の強化が出来ればこんなに使える技はありません。」
身体強化魔法についてクロノは語る。
「実際に身体強化魔法が使えなければエリッツさんにも勝てないと思います。それくらい何も無い状態の兄さんは年相応よりちょっとすごい筋力しか持っていません。それでもキールさんやエリッツさんを吹き飛ばせたのは身体強化魔法をその瞬間だけ足に、腰に、肩に、腕に必要な箇所だけをかけることによりとてつもない力を引き出しています。ちなみに騎士の人が同じようなことをしようと思っても魔法を持続する魔力が足りないか、瞬時に必要な箇所の強化をしようとして使いこなせず隙だらけの動きになるかどちらかですね。」
普通の人には無理なことをクロノは皆に説明する。
「反応速度と身体強化魔法、この2つがあるからノアオ君はアルスター君とここまでやりあえてるんだね。」
クロノの解説を聞いて納得するヒューバートと周りの人達。
「それと、アルスターさんは先程の攻防を見た感じ兄さんと同レベルの反応速度を持っていますね。そうでなければ双背撃の一撃をあんなにギリギリで躱せる事に理由がつきませんからね。同等の反応速度を持っているからなのか兄さんの力の強さも身体強化魔法だと分かっていたみたいで兄さんに疲労回復薬を渡してたんだと思います。兄さんと全力で戦いたいから。」
クロノはアルスターの強さについても語る。
「なのでどちらも互角の実力を持っていますけどこのままでは確実に勝負が決まりますね。」
クロノは2人の戦いを見てはっきり告げた。