学院と迷宮 勇者の力
「本気で行くよ。」
覚悟を決めてノアオはテスタとの戦いに望む。
「少しだけ待って欲しい、すぅ、はぁ。」
開始を待って欲しいというテスタは深く深呼吸をして心を落ち着けていた。
「よし、いつでもいいよ。」
テスタは真剣な表情で剣を構える。
「それでは開始!」
修練場の外でキールの大きな開始の合図が響き渡る。
合図と同時に全力で攻めて来るノアオは本気でその一撃で終わらせようと読まれる事を考慮して2段のフェイントを織り交ぜ、足元狙いに見せてその攻撃を飛んで躱すテスタを想定し、頭部を狙うと見せて攻撃を剣で受ける想定をして空いているであろう銅を横一文字に切り払う動きを見せる。
しかしそれは想定の動きでしか無く実際にはそうはいかなかった。
ノアオの攻めに合わせてテスタが全力で突きを放って来たからだ。
その突きに反応し足元狙いのフェイントさえやめて剣で突きを受け流すノアオ。
「反応するって信じてた。」
その時テスタの格上に勝つと言う想いに応えたのか手の甲が光り輝き始めた。
その光を放つ手の甲には紋章が浮かび上がりその瞬間世界が止まったように感じたテスタ。
(思考が研ぎ澄まされているのか?まるで止まった世界に1人取り残された気分だな。)
その瞬間をまるでひとりぼっちの様な世界に感じ右手に持つ剣の柄がノアオの剣に引っかかっらないように縦向きに変え腕がノアオの剣を超えたと同時に左手で右手を押さえ込み無理やりにノアオの足元を狙う一撃を放つ。
ノアオは剣が柄で止まると思っていた為反応しきれていなかった。
足元を狙うテスタの剣を躱す事ができないと理解したノアオは自分の背後にまわられて見えていないテスタの位置を想定で判断し後ろ向きに剣を突き立てる。
テスタの一撃はノアオの右足を確実に切り取るが少し遅れて想定できなかった突きがテスタの喉元に届く。
テスタはその突きを止まった世界でどう避けるか考えて見るものの自分の剣はノアオの足を刈っている状況で為す術はなかった。
せめてもの判断で首を傾けてその突きを躱す行動に移るもノアオの見えていない突きは的確に首を捉えていたため傾けるくらいでは躱し切れずその一撃で致命傷扱いとなった。
修練場はノアオの勝利を表示して2人が下りてくる。
「今回は勝ったと思ったのに見えてないはずのあの攻撃はどうしようもない!」
勝てると思っていただけに悔しさを全面に出すテスタ。
「本当に負けるかと思った。見えないながら狙ってはいたけど実際に当てれたのは勘が大きいから負けてもおかしくなかった。すぐに抜かれそうだ。」
ノアオは勇者の力を引き出したテスタに対して全力を尽くしてギリギリの勝ちを収めれたが次は勝てるか分からないと戦々恐々とする。