魔法学院休日 ちょっとした騒動
「ここの杖を私が買う権利がないとは一体どう言った了見だ!?私を誰だと思っているのだ?」
貴族風な男が杖の店員さんに怒鳴っている。
「何を言われようと売れないものは売れないんです。お師匠様が決められた事なのでこれは絶対です。」
店員の女の子はその圧に負けじと言い返す。
「ふざけおって魔法学院の生徒であるこの私にそんな舐めた口を聞くとは!」
激高したその男は店員さんの頬を叩いた。
その衝撃に倒れ込む店員さん。
周りの人間は貴族に絡まれたくないと警備員が来るまで遠巻きに見ている。
「何をされても貴方にうちの杖を使う資格はありません!帰ってください。」
頬を叩かれてもその態度は変わらず貴族の男を追い返そうとする。
「そうか、それなら仕方ない。風よ、目の前にいるこの女を敵と見なし大きな風となりて吹き飛ばす攻撃となれ ウインドアタック!」
こんな街中で自分の私利私欲のために小さな女の子相手に魔法を放つ貴族を許せないクロノは女の子の前に立ちあっさりと魔法を打ち消す。
魔法を消された貴族も魔法が当たると思っていた女の子も何が起こったのか把握出来ておらずぽかんとした表情を浮かべている。
「店員さん、大丈夫ですか?」
女の子の方を向き優しく声をかけ立ち上がれるように手を差し出すクロノ。
「は、はい。ありがとうございます。」
店員さんは何が起きたかわかっていないが優しくされてその手を取り立ち上がった。
「すぐに終わらせるので少しだけ待っててくださいね。」
店員さんに優しく声をかけ貴族の方へ向き直るクロノ。
「貴様!何をしたのか知らないが私の邪魔をしたな。貴様のような平民が貴族であるこの私に向かって!」
立ち向かって来るクロノ相手に更に激高する貴族の男。
「二度とこの私に立ち向かって来れないように教育してやろう!風よ、我が前にいるものを敵とみなし大きな風となりて…ぐっ!!」
貴族の男か先程と同様の詠唱を長々としている途中で周りに気づかれないように無詠唱の魔法を放ち吹き飛ばすクロノ。
またもや何が起こったか周りの人間は把握出来ておらず困惑しているがすぐに警備員が飛んできて倒れている貴族の男をどこかへ連れて行ってしまった。
「叩かれた場所も大丈夫ですか?」
変わらずぼうっとしている店員さんに声をかけるクロノ。
「あ、えっと大丈夫です。何が起きたのかよくわかっていませんけど貴方が何かをしてくれたんですよね。助けていただいてありがとうございます。」
丁寧に頭を下げて感謝を述べる店員さん。
「全く無茶しやがって、さっきの上級生だし何かあったらどうするつもりだったんだか…」
そばにいたパラがクロノに声をかける。
「何も無かったんだからこれで良かったんですよ。」
パラの方を向いて笑顔で答えるクロノ。
「えっと、魔法使いの方なんですよね?良かったらうちの杖を見ていきますか?」
クロノとパラが腰にかざしている杖を見て店員さんがお店の案内をしてきた。